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「朝起きたときにひざがこわばる」「階段の上り下りや、椅子から立ち上がるときにひざが痛い」などと、ひざのトラブルを抱える中高年が増えている。

 

「最近、ひざ痛の患者さんが急増しています。長引く巣ごもりによる運動不足に、コロナ太りも重なったことで、ひざに負担がかかっているのです。ひざ痛の9割以上は変形性ひざ関節症で、病院では『安静にするように』と医師から言われるかもしれませんが、いつまでも動かさないとひざ関節を支える骨や軟骨、筋肉や靭帯が衰え、ひざ痛が慢性化してしまいます。私は、『安静に』と言ったことはなく、『痛くない範囲でひざをできるだけ動かしてください』とアドバイスしています」

 

そう語るのは、江東病院理事長で順天堂大学医学部整形外科特任教授の黒澤尚先生。黒澤先生は、1回1分程度、自宅で簡単にできる「運動療法」を’80年代から提唱。世界的に効果も実証され、臨床現場でも治療に取り入れられている。

 

毎日体操を続けることで、一時的な痛みを抑えるだけでなく、長い期間、効果が持続するという。

 

日本人の多くが「ひざ痛」に悩まされているが、その数は’05年に東京大学医学部の研究グループが行った調査によると約2,400万人。ひざ痛の患者とその予備軍を含めると約3,000万人、じつに日本人の4人に1人にものぼるという。

 

そして、その原因の約9割を占めると考えられているのが「変形性ひざ関節症」だ。

 

「変形性ひざ関節症は、長年にわたるひざへの負荷により、ひざの軟骨がすり減っていく病気です。すり減った軟骨は元に戻ることはなく、すり減りつづけます。ただ、痛みの出る原因として、骨と骨がぶつかるから、というイメージを持たれる人が多いと思いますが、軟骨がすり減ること自体は痛みの原因ではありません」(黒澤先生、以下同)

 

ではいったい、ひざの痛みはどうして起こるのか。

 

ひざは大腿骨(ももの骨)と、脛骨(すねの骨)をつなぐ部分だが、硬い骨同士が直接触れているのではなく、すべりをよくしたり、衝撃を吸収したりする関節軟骨が表面を覆っている。

 

「ひざは立ったり、座ったりするだけで、体重の数倍もの力がかかります。さらに歩くときには、じつに体重の5倍以上もの負荷がかかるといわれており、関節軟骨がすり減りやすいのです。関節軟骨がすり減ると、すり減った細かい摩耗物質が出て関節包の内側の滑膜を刺激します。すると、摩耗物質は異物とみなされ、免疫反応が起こることに。滑膜の細胞からは『炎症性サイトカイン』という物質が分泌され、炎症を引き起こすことにより痛みが出るのです。つまり、痛みの正体は炎症性サイトカインなのです」

 

ひざの関節軟骨は日々の生活のなかで、長い年月をかけて少しずつ摩耗し、変形性ひざ関節症になってからも、さらにゆっくりと進行していく。

 

多くの場合は、軽症(初期)→中等症(中期)→重症(末期)と進むが、初期の特徴的な症状は、ひざのこわばりや違和感で、時に強い痛みを感じて腫れを伴うケースもあるという。

 

中期になると、ひざを使う動作のときに常に痛みが現れるようになり、長時間歩けなくなったり、階段の上り下りの際にひざが強く痛んだりする。

 

さらに末期になると、立つ・座る・歩くといった動作がスムーズにできなくなる。生活に大きな支障をきたすだけでなく、場合によっては安静にしているときでもひざが痛むケースもあるというから要注意だ。

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