■薬剤師が教える薬不足への対処法
こうした事態に、「患者の経済状況によって“医療格差”が生まれてしまう」と、憂慮するのは、インターパーク倉持呼吸器内科クリニック院長の倉持仁さんだ。
「うちにはリウマチの患者さんもいらっしゃるのですが、リウマチの注射薬は高額で、ジェネリック(エタネルセプト)でも1回約1万5,000円します。この注射を1カ月に4本打つ必要があり、3割負担でも約2万円かかる。先発薬(エンブレル)は、さらに高く1回約2万4,000円。そのため、できるだけジェネリックを使用したいのですが、現在はどちらも入荷しにくい状況です。代わりの薬はより高価になるため、経済状況によっては薬を出すかどうか、という話になってしまいます」
今回の問題の背景には「薬価の極端な引き下げ」があると倉持さん。
「薬価も二極化していて、リウマチ薬のように薬価の高い薬がある一方で、よく処方される解熱剤のアセトアミノフェンのように、一錠わずか7円という極端に安いジェネリックも多いのです。しかし厚労省は、医療費削減のため、年々、ただでさえ安い薬価をさらに引き下げています。すると、薄利多売に陥ったメーカーは少しでも製造コストを削減しようとして無理をする。その結果、今回のような事態が起こったのではないでしょうか」
こうした供給不足は、果たしていつまで続くのか。
「厚労省は正常化までに少なくともあと2年かかると発表しています。先日、大手ジェネリックメーカーの沢井製薬が問題を起こした小林化工の工場と従業員を引き継ぎ、’23年の春に出荷を開始する見込みだと発表しましたが……」(Aさん)
まだまだ安定供給までの道のりは遠そうだ。
患者として、なにか備えられることはあるのだろうか。Aさんがアドバイスしてくれた。
【薬不足への対処法】
〈1〉かかりつけ薬局をつくる
定期的に処方されている薬があることを薬局側が把握していれば、その分だけは最低限確保してくれる場合がある。
〈2〉受診1週間前に薬局と電話で相談する
事前に電話などで処方薬があるかを確認しておけば、来局日までに薬を用意してくれる場合がある。
〈3〉健康診断や検査の結果を薬剤師に伝える
本来使いたい薬が在庫切れで、代わりとなる薬を提案してもらう際に、薬が合わないリスクを減らすことができる。
「かかりつけの調剤薬局を持ちましょう。いつも処方されている薬がある方は、事前にかかりつけ薬局に『次の診療はいつです』と伝えておくと、そのときまでに薬を確保してくれる可能性が高まります」(Aさん)
くれぐれも、「薬がなくなる!」と慌てずに、落ち着いて備えたい。