■医学の発展で入院日数は短く
まずは国民病ともいわれるがん。
「胃がんの主原因はピロリ菌で、血液や呼気による検査で感染の有無がわかり、保菌者は除菌すれば発症を抑制できます。がんを発症しても、早期であれば内視鏡で腫瘍を切除できます。体への負担が少なく、入院日数も短期間に。胃を切除することになっても、いまは腹腔鏡でおなかに数カ所穴を開けるだけの手術が主流なので、以前よりも短期間での社会復帰が望めます」(上さん)
大腸がんも同様で、手術でがんを切除する場合は体への負担の少ない腹腔鏡を使うことが多い。
「胃がん同様、ごく早期の大腸がんは内視鏡での切除も可能です。入院日数も格段に短くなる傾向があります。前がん状態のポリープも含め、外来での治療も積極的に行われています」(尾崎さん)
医療の発展により入院日数は短くなっているが、抗がん剤治療が長期間に及ぶケースも。
「乳がんはステージ1でも治療から10年以上後に再発することがあり、がんのタイプ次第でホルモン療法を5~10年間実施します。入院費用以外にもお金がかかることは想定しましょう」(尾崎さん)
がんと並ぶ3大死因のひとつ、心臓病(急性心筋梗塞)は、医療費もグッと跳ね上がる。
「カテーテル治療が主流ですが、入院費用が高くなるのは、術後に専門の病床で管理するためだと思われます。重症の場合は、心臓の血管に迂回路を作って、血流を確保する冠動脈バイパス手術などを行うことになります」(上さん)
同じく3大死因のひとつである脳血管疾患はどうか。
「くも膜下出血の場合は、軽度であれば手術なしのケースもありますが、中等症状であれば出血を止めるためにクリップを使用します。脳圧を下げるため、頭蓋骨に穴を開けることもあるので入院期間も長くなります」(上さん)
一方の脳梗塞は、血をサラサラにする薬のほか、発症早期の患者には、血栓を溶かす薬などを投薬。経過を観察することになるという。
「これはtPA静注療法という治療法。かつては、効果が期待できるのは発症から3時間以内とされていましたが、現在は4.5時間に引き延ばされました。加えて、ステントなどの器具で血栓を回収する手術が導入され、治療成績が向上しています」(尾崎さん)
5人に1人が罹患するともいわれている糖尿病でも、入院するケースがあるという。
「一部の重症例を除けば、『教育入院』が多いですね。なかなかご自分では生活改善ができない人、インスリン注射を導入する人などが注射の打ち方、運動療法、食事療法などを数日から2週間ほどで学ぶための入院です」(尾崎さん)
加齢とともに罹患しやすい病気といえば肺炎と白内障だ。
「肺炎の治療は、抗菌薬の点滴になります。早い人ならば1週間、長い人で1カ月ほどの入院期間です。高齢になるほど、長くなるでしょう。目のレンズの役割となる水晶体が白く濁る白内障の手術は、難しいものではありません。術前術後の時間を合わせても30分ほど。そのため外来による日帰り手術をしているクリニックもあります」(上さん)