■本誌女性記者も、治療約1カ月で劇的改善
「更年期障害と診断された場合、治療法として代表的なものが、『ホルモン補充療法(HRT)』。加齢とともに少なくなった女性ホルモンを体内に投与することで更年期障害の症状が改善されるのです」
そう教えてくれたのは、成城松村クリニックの松村圭子院長。
本誌の女性記者も、ホットフラッシュやめまいなどのひどい更年期障害の症状に悩まされていたが「ホルモン補充療法」を行い、処方から1カ月ほどで症状が劇的に改善した経験がある。
そんな「ホルモン補充療法」とはいったいどんな治療法なのだろうか。前出の松村先生に解説してもらった。
「不足してしまったエストロゲンを体内に補充する治療ですが、エストロゲンだけを補充すると、子宮内膜が厚くなり、子宮体がんを発症するリスクが高まってしまうことに。そのため、エストロゲンによる子宮内膜の増殖を抑えるためにプロゲステロンという黄体ホルモンも併用します」
更年期障害の自覚があり、ホルモン補充療法を受けたいと思った場合、どのような診断を経て処方してもらえるのだろうか。
【1】カウンセリング・血液検査
悩まされている症状が、更年期障害によるものであるかを見極める。判断基準の一つとして女性ホルモンなどの数値を測る血液検査を行う。
「更年期の症状は200種類もあるといわれているので、本当にそれが更年期によるものなのか、まずはじっくりカウンセリングを行います。また、血液検査でE2というエストロゲン値と、エストロゲンを出すように促すFSHというホルモン値を参考にすることもあります。それらを総合的に判断して、更年期障害かどうかを診断していくのです」(善方先生)
【2】乳がん・子宮がんの検査
診断されてもすぐに薬が処方されるのではなく、治療を行っても問題ないか、持病や病歴を必ずチェックする。
「乳がん、子宮頸がん、子宮体がん検診で異常がないか確認しておくことは必須。ホルモン補充療法で投与する女性ホルモンが、病気の進行や再発のリスクを招く場合があるためです。ほかにも心筋梗塞や脳卒中の病歴がある人も受けられないため、事前に確認を行います。がん検診の場合、1年以内の検診の結果があれば検査を新たに行わなくてよいので、自治体が行っている検診を定期的に受けておくのがオススメです」(松村先生)
【3】自分に合った処方薬を選ぶ
ホルモン補充療法の処方薬はさまざまで、「貼る」「塗る」「飲む」の3つのタイプがある。
〈貼る〉:腹部などに貼ることで皮膚から直接血管に吸収されるため、胃腸や肝臓への影響が少ない。併用する黄体ホルモンが配合されたものが手軽で人気。
〈塗る〉:ジェルもしくはクリーム状の薬を塗ることで皮膚から血管に吸収され、胃腸や肝臓への影響が少ない。併せて錠剤の黄体ホルモンを服用する。
〈飲む〉:錠剤を飲むタイプで薬の増量や減量が簡単。ただし、薬は胃腸から吸収され、肝臓を通って血液中に入るため、胃腸や肝臓の弱い人には不向き。