医療機関がひっ迫するなか、自宅療養者数は急増(写真:アフロ) 画像を見る

新型コロナウイルスの第7波の猛威により、自宅療養者が急増している。医療機関のひっ迫もあり、多少の不調であれば市販の医薬品で対処する人も少なくない。そして、夏場にはコロナのほかにも体調のトラブル要因が多々ある。市販薬を求めて薬局やドラッグストアを訪れると、種類が豊富すぎてどれを選んだらよいのかわからなくて困った、という経験がある人もいるだろう。

 

薬剤師の宇多川久美子さんは、「市販薬には、最近まで処方せんが必要だったものもある」と指摘する。

 

「解熱鎮痛剤で知られているロキソニン、皮膚疾患に使うリンデロンV、胃薬のガスター10などは今では手軽に買えますが、薬効が強く、以前は薬剤師の処方のもと、取り扱いに注意が必要だった薬です。こうした市販薬を『スイッチOTC』といいます。これらの薬剤をはじめ、薬には副作用がつきもの。そのことを頭に入れておくことが大切です」

 

専門家のアドバイスをもとに、夏に出やすい症状について、市販薬の選び方、そして使い方を一度チェックしておこう。まずは夏かぜ。室内と屋外の気温差や、疲労の蓄積などが影響してかぜの症状が表れることが多い。

 

「夏のかぜは鼻水やくしゃみ、のどが痛いといった症状が主です。総合感冒薬、すなわちかぜ薬にはあらゆる症状に対する薬効が含まれていますから、鼻水やくしゃみが顕著なかぜであれば、『抗ヒスタミン系』の薬を選択しましょう。ただし、ウイルス性疾患を根本から治す薬はありません。目的はあくまでも症状を緩和することです」(宇多川さん)

 

薬を飲んで症状を抑えながら、十分な休息をとって、自分の体がウイルスに打ち勝つ環境を整えることが大切だ。銀座よしえクリニックの井上肇さん(聖マリアンナ医科大学特任教授)も次のように話す。

 

「かぜ薬はズルズルと飲み続けるものではありません。なかなか体調が改善しないようであれば、市販薬の服用を中止して医療機関にかかりましょう」

 

胃痛、胃もたれ、胃のむかつきなども暑い日が続くと出やすい。

 

「キリキリとした胃の痛みは胃酸過多が原因で起こります。このとき、痛みがあるからといって解熱鎮痛剤を使うのはNG。胃の粘膜が荒らされて、かえって胃痛が悪化することも。最初はガスター10などH2ブロッカーと呼ばれる胃酸をコントロールする薬を1週間ほど服用し、その後、胃の粘膜を保護する薬を飲んで粘膜を落ち着かせましょう」(井上さん)

 

痛みにはとりあえず解熱鎮痛剤、という癖がある人は改めよう。そして、症状が長引く場合はやはり医療機関の受診を。気温差が大きいと生じがちな便秘も、薬の頼りすぎには注意。

 

「便秘薬で排便ができても、またすぐに薬に頼るようでは根本的な解決にはなりません。1週間ほど薬を飲みながら毎日排便を促し、腸に排便の習慣を記憶させたら服用を止めましょう」(井上さん)

 

同様に、腸内の病原体を体外に排出する作用である下痢も、薬に依存しすぎるのは好ましくない。反対に、安易に薬を中止しないほうがよいケースも。汗をかきやすい夏場の悩みである湿疹や皮膚のかゆみに対処する薬は、ステロイドか非ステロイドに大きく分けられるが、井上さんは2段階での使用を推奨する。

 

「ステロイドは効き目がいいので、塗り始めて数日もすると多くの場合、かゆみなどの症状が治まります。この時点で塗布をやめてしまう人が多いのですが、その後も1週間ほど継続し、この後に抗ヒスタミン軟膏やクリームに切り替えて、肌がつるつるに戻るまで適量を塗布することが症状を絶つためには大切です。ステロイドは患部を覆うくらい十分な量を塗布して一気に叩いてしまうことが、効果を得るためにも皮膚への影響を少なくするうえでもとても重要なのです」

 

水虫を治療するための薬もまた、ある程度の期間使用を続けたい。

 

薬局やドラッグストアを訪れる際は、服用している処方薬やアレルギーなどがある場合はそれを薬剤師に伝えることを忘れずに。市販薬の効能と副作用をきちんと把握したうえで、不調を乗り切るために上手に役立てよう。

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