歯のひび割れ、歯周病悪化、顎関節症など、口内に悪影響を及ぼすとされている、睡眠中の“歯ぎしり”。隣で眠る人の睡眠を妨げてしまう問題もあるが、歯ぎしり自体を改善する対策はこれまで見つかっていなかった。だがーー。
5月24日、岡山大学とノートルダム清心女子大学の研究グループが「睡眠中の歯ぎしりは食物繊維の摂取量と関連している可能性がある」ことを世界で初めて発見したことを発表。注目を集めている。
「研究では、まず学生143人を対象に、歯ぎしりの有無を調査。『ある』と答えた学生が58人、『なし』が85人でした。そこから全員に過去1カ月の食事内容を聞き、ビタミンやタンパク質など、35種類の栄養素の摂取量を集計しました。栄養素摂取量と歯ぎしりの有無を比較して分析した結果、睡眠中に歯ぎしりをする学生は、しない学生よりも食物繊維の摂取量が少ないことがわかったのです」
こう語るのは、同研究グループのメンバーで、岡山大学学術研究院医歯薬学域の外山直樹助教。食物繊維は、整腸作用や血糖値上昇の抑制など、さまざまな健康効果が明らかにされている。
毎日の食事でこの栄養素を多く摂取すれば、歯ぎしりが改善する可能性があるかもしれないとする研究結果は、すでにスイスの学術誌のオンライン版にも掲載され、歯ぎしりの新たな対処法としての期待も高まっている。厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)によると、1日当たりの食物繊維の目標摂取量は、成人男性が21g以上、成人女性が18g以上だ。食物繊維は「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類に大別され、これらをバランスよく摂取することが大切だと外山助教は話す。
そこで、毎日の食卓で、継続的にたくさん食物繊維を取るにはどんな食材が適しているのか。外山助教にアドバイスしてもらった。
「おすすめしたいのは“スーパー大麦”。やはり、主食としてごはんを毎日食べる家庭が多いと思います。米1合に対し、スーパー大麦を12g入れて炊くだけでOKです。スーパー大麦には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方がバランスよく含まれており、食習慣に取り入れるのにとても便利ですよ」
このほかに、食物繊維をバランスよく摂取できる食材として、根菜類や海藻類などもいいそうだ。
「たとえば、きんぴらごぼう、海藻サラダ。野菜だけでは少ないので、ヒジキやワカメ、昆布などをサラダに入れるとよいでしょう。しいたけやきのこ類も、炒め物や煮物など広く使えるのでおすすめの食材です」
外山助教は今後、食物繊維の摂取量と歯ぎしりの改善の関係について、より詳細な検証を進めていくという。
毎晩、夫や自分の歯ぎしりに悩まされているという人は、毎日のごはんに大麦をプラスしてみてはいかがだろう。