■双極性障害は、うつ病に比べて自殺してしまうリスクが3倍高い
「はっきりとした原因はわかりませんが、家族に双極性障害の方がいる、つまり家族歴があると、相対的にリスクが高くなります。加えて、年に2回以上うつ病の再発を繰り返している、という方は、自覚がないだけで、合間に躁状態になっている可能性があります」
最悪の場合、命を落としてしまうこともあるという……。
「双極性障害は、うつ病に比べて、自殺願望を持つ方が1.3倍、自殺未遂をする方が1.7倍、実際に命を落とされる方は3倍高いというデータもあります。特にうつと躁の特徴が混じる混合状態では、気持ちはうつでも、行動は活動的なので、自死に踏み切ってしまうことがあるのです」
診断するうえで重要なのは、躁症状があるか、という見極めだという。躁状態になると、具体的にどのような行動がみられるのだろう。
■“衝動的爆買い”や“しつこい長電話”も要注意!
「双極性障害には、I型とII型があり、激しい躁状態があり、周囲を巻き込み日常生活に支障をきたすのがI型。いっぽう、躁の時期に周囲から見るとふだんとは違うことがわかっても、なんとか日常生活を送れている場合はII型と診断されます」
双極性障害II型は、うつ状態の合間に軽躁状態が見られるという。
「まず見られるのが、睡眠時間の変動です。眠らなくても元気というのが躁状態。逆に睡眠時間が急激に増えたり不眠になったりするのがうつ状態。また、女性では多弁になる方が多いです。夜中でもかまわず電話をかけまくったり、周囲の人に一方的に話し続けたりすることも。長文のLINEを手当たり次第に送り、即レスがないとキレることも珍しくありません。ほかにも、性的な逸脱行為や通販サイトで化粧品をウン十万円分買ってしまった、などという方もいらっしゃいました」
そこで軽躁状態で見られる行動をチェックリストにまとめた。4つ以上の項目にあてはまり、年に2回ほどうつ症状がある場合は、双極性障害の可能性が考えられる。
双極性障害と診断された場合、治ることはあるのだろうか。
「精神疾患が完治する割合は低く、双極性障害では全体の1割未満と非常に少ないです。そのため、“寛解”を目指すことになります」
つまり、躁うつの波が小さく、差し障りなく日常生活を営める状態を目指すということになる。
「症状によりますが、薬とうまく付き合いながらコントロールするのが一般的です」
症状を改善するためには、まわりの理解や協力も不可欠だ。
「双極性障害の患者に対して、『早く○○して』とせかしてペースを乱したり、『普通はこうでしょ』『どうして○○なの?』などと責めるような言葉を発するのはご法度です。かえって症状を悪化させてしまう可能性があります」
「家族や知人に双極性障害の患者がいる」という人は、こうした点についても周囲であらかじめ話し合い、病気に対する理解を深めておくことが重要だ。
最近、気分の浮き沈みが激しいな……という場合は、「更年期のせいだろう」と自己判断することなかれ。一度、メンタルクリニックを受診することも視野に入れよう。
【軽躁状態のチェックリスト】(4つ以上ついたら黄色信号)
□ あまり寝なくても平気
□ 自分は有能だと思う
□ おしゃべりが止まらない
□ 日々アイディアが湧き出る
□ 気分の浮き沈みが激しい
□ 1つのことに集中できない
□ 快楽を追求したい
□ イライラすることが多い
□ 衝動的に爆買いしてしまう
□ 長電話やLINEの連投をする
□ 活発で1日、1万歩以上歩く
□ 体重の増減が激しい
□ 1年で2回以上うつ状態になった
※軽躁状態で見られる行動になります。
双極性障害では、うつの状態と上記の軽躁の状態が交互に現れます。
