■大人になって初めて感染すると命の危険もある
気がかりなのが、一度も水ぼうそうになったことがない大人だ。
「かつて欧米で子どもが水ぼうそうになると、近所の子どもたちがその家に集まって遊んだそうです。
これは大人になってかかると重症化する水ぼうそうに子どものうちにかかってしまおうとしたもの。
大人になって初めて水痘・帯状疱疹ウイルスに感染すると、子どもと比べ重症化しやすくなり、合併症として肺炎が起こったり、脳への感染によって脳炎になったりと命に関わります」
水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫があるかどうかは、子どものころに水ぼうそうにかかったかどうかである程度わかる。
親などに聞いて「水ぼうそうにはならなかった」と言われたら要注意だ。
さらに水ぼうそうが厄介なのが、治った後もウイルスは体の中からなくなることはないこと。
「ウイルスは一生にわたって神経のなかに潜伏します。
ふだんは免疫の力でウイルスの活性が抑えられていますが、ストレスや加齢、疲労などにより免疫の力が低下すると、ウイルスが再活性化し、神経に沿って発疹が出る。それが帯状疱疹です」
50代以上で発症する人が多く、ピリピリとした痛みとともに発疹が帯状に広がる帯状疱疹と水ぼうそうは同じウイルスが原因で起こるのだ。
「帯状疱疹を発症している高齢者に接触した孫が水ぼうそうになったことで、2つの病気が同じウイルスによってもたらされることが明らかになりました。
ただし、同じウイルスだとしても水ぼうそうの患者に接触したからといって帯状疱疹を起こすことはありません。
ちなみに小児科医と保育士は帯状疱疹にかかりにくいと言われていますが、それは水ぼうそうの子どもとたびたび接触することで、“自然の予防接種”を何度も受けているようなもので、免疫の力が強くなり、ウイルスの再活性化を抑え込んでいるからです」
日本人のほとんどは水痘・帯状疱疹ウイルスを保有していることから、免疫力が低下した場合に、それまで眠っていたウイルスが目を覚まして、帯状疱疹を発症するのは“宿命”なのかもしれない。
これだけは帯状疱疹ワクチンで発症を抑えることがなによりだ。
■感染力はインフルエンザやコロナ以上!
ちなみに帯状疱疹ワクチンには「生ワクチン」(約1万円)、「不活化ワクチン」(約2万円×2回)の2種類ある。
自治体によって助成がでることもある。
いずれにしても水ぼうそうの感染を広げないことが肝心だ。
「感染予防にはワクチン接種が有効。
1~3歳の幼児に対するワクチン接種が大切です。
また水ぼうそうは、患者と同じ部屋にいるだけで何も接触がない場合でもうつるほど、コロナやインフルエンザと比べても強い感染力を持っています」
感染している人が身近にいたら近づかないこと。マスクの着用、石けんによる手洗いをきっちりとやること。
かわいいお孫さんのためにも日ごろの感染予防対策を心がけるようにしよう。
画像ページ >【閲覧注意|写真あり】水痘・帯状疱疹ウイルス(他2枚)
