「’15年1月から11月の『老人福祉・介護事業』の倒産は66件で、前年の年間倒産件数54件を上回り、’00年以降では過去最悪のペースです」
そう語るのは、東京商工リサーチの情報本部・関雅史さん。倒産に追い込まれているのはおもにデイサービスや訪問介護などを提供する事業体だが、今後は、有料老人ホームの倒産、閉鎖、経営譲渡も今後増えていくと思われる。
老人ホームの“大倒産時代”がやってきたとき、犠牲になるのは入居者だ。そこで、まず大事なのは“つぶれないホーム”を探すことが大前提になってくる。そのポイントをWEB上で有料老人ホームに関する情報を発信している「もも編集室」の山中由美さんと、高齢者向け住宅仲介をしている「えんカウント」代表の満田将太さんが教えてくれた。
【1】最初に“重説”を確認!入居率80%が合格の目安
「有料老人ホームには、必ず重要事項説明書(以下・重説)があります。これは入居をする、しないにかかわらずもらえるものですが、まずは入居率を見ましょう。施設の資金繰りが良好だという目安は入居率80%。しかし、オープンしたばかりで入居者が少ない施設は判断するのは難しい。チェーン展開している場合は、他施設の入居率を調べること。たとえば5施設あって、どれも入居率50%程度であれば、かなり経営は厳しいと見ていいでしょう」(山中さん)
【2】介護職員の離職率が高い施設は要注意!
「“重説”には離職率も明記されています。施設によって大きく違いが出る数字で、なかには50%という高い離職率の施設もあります。当然、介護内容を心配していいでしょう」(山中さん)
【3】親身になってくれる仲介業者かどうか見極める
「業者は仲介料10万円の良質なホームよりも、多少質は落ちても、仲介料30万円のホームを紹介するもの。利用者の条件に合えば、提携していない施設も候補に挙げる業者は信頼できると思います」(満田さん)
【4】財務状況を開示しない施設はまず疑え!
「賃借対照表や損益計算書など、運営会社の財務諸表を見せてもらうこともポイント。経理の知識がなくても、情報開示に務めているかの判断材料になります。私の経験上、優良といわれる施設は、財務諸表のコピーをくれるケースが多かったです」(山中さん)
【5】“24時間常駐”など広告にウソがないか!
「東京都が4年ほど前に調査したところ、施設のホームページで書かれている内容が“現実と乖離している”と判断されたケースは約50%、パンフレットの場合は約30%にものぼりました。もっとも多い“ウソ”は、職員の配置。『24時間、看護職員が常駐』とあるのに、ゼロというケースも散見されます」(山中さん)
【6】施設見学では入居者や職員の“顔”を見る!
「施設に入った瞬間、排泄臭がするようなら、その場で帰っていいくらいです。次には人を見てください。入居者が部屋にこもりきりになっていないか、共有スペースは穏やかな雰囲気か。また職員が切羽詰まった顔でバタバタと走り回っているような雰囲気は問題です。人員に余裕のない施設は殺伐としていて、見学に来た人に挨拶すらできない。人員不足でサービスが低下すれば入居率も低下。やがて経営悪化にもつながります」(山中さん)
【7】“格安”の無届けホームに期待してはいけない
「無届けホームに関しては行政の目が行き届いておらず、虐待や火災などが発覚しない限り警察も踏み込めません。実際、関西のあるホーム(借上げアパート)は、全室郵便受けが目張りされて、徘徊防止に外から鍵がかけられていました。倒産という事態になれば、どこまで責任を持って次の受け入れ先を探してくれるのか、不安が残ります」(山中さん)
【8】元気なうちから自分で準備を始める
「ホームに入居する人の平均年齢は85歳。ぎりぎりになってホームを探し始める人がほとんどです。たとえば家族が脳梗塞を起こし、まひが残ったまま退院日が決められた時に、慌てふためくのです。結果、入居者本人の希望よりも『とりあえず入れるなら』という家族の希望が優先される。元気なうちから住みたいホームの候補や希望を伝えることが大事です」(満田さん)
ますますニーズが高まる有料老人ホーム。トラブル回避のためにも、利用者は賢くならなければならない。