「公的年金や退職金の減額が確実視されているなか、早急に“老後の準備”をする必要が出てきました。そこでぜひ、考慮しておきたいのが、公的年金に上乗せする形で老後資産を積み立てられる確定拠出年金(DC)です。税制面でも非常に優遇されており、“ほぼ確実に得をする私的年金”と考えています」
そう力説するのは、『ズボラな人のための確定拠出年金入門』(プレジデント社)の著者で、社会保険労務士の井戸美枝さんだ。度重なる制度改正が行われている公的年金。庶民にとっては、将来の年金が減らされる“不安”が募るばかり。また、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用する137兆円もの年金資金が、株価暴落によってピーク時より直近1年で10兆円も目減りしていることもわかった。また、年金と同様に、サラリーマンの老後資金の柱となる「退職金」も減額される傾向にあるという。
そこで井戸さんが、“ほぼ確実に得をする私的年金”と語るDCについて解説してくれた。DCは、勤め先の会社が掛金を拠出する「企業型」と、企業年金の対象でない会社員や自営業者が自ら加入する「個人型」に大別される。
「これまでのイメージにある年金は、確定“給付”年金といって、国や企業が年金の受給額を約束していましたが、DCは、毎月一定の掛金で、国内株式や海外債券などのファンドを購入して運用するものや定期預金があります」(井戸さん・以下同)
今回は「個人型」を中心に解説していくが、個人での運用となると「難しい、面倒、損をしそう」と敬遠されがち。
「今年3月末の時点で、個人型DCの加入者は25万7,000人で、対象者の1%にも満たないというのが現状です。加入者が増えない原因は、そうしたイメージだけでなく、販売する金融機関が、あまり積極的にPRしていないということもあるでしょう。それはわれわれに有利で、金融機関にとっては“もうからない”商品だからです。しかし、来年からは状況が一変します」
5月の法改正で、来年1月から、これまで加入できなかった公務員や会社員を配偶者に持つ専業主婦(主夫)も利用できるようになり、ほぼすべての人が加入対象となるためだ。井戸さんは、「支払い期間は60歳までです。スタートダッシュして1カ月でも多く積み立てられるように、今から勉強、検討しておくべきです」と語る。
通常、NISA(少額投資非課税制度)口座での取引を除いた、一般的な投資信託や株式投資では、運用益に20%もの税金がかかる(復興税は除く。以下同)。ところが、DCで得た利益は、そのまま年金として受け取れるのだ。利率3%で月2万円ずつ10年間支払い続けた場合を井戸さんが算出した。
「総支払い額240万円に対してリターンは279万円。39万円の利益となります。これがDCであれば運用益が非課税となり、約39万円を得られる可能性もある。一方で、まったく同じ利率の投資信託の商品場合は、運用益の20%、約8万円の税金が引かれてしまうのです」
あなたも、加入で大幅な節税が可能になるDCを検討してみてはいかが?