image

 

「米国では、毎年8万人がヒアリに刺されて、約100人が亡くなっています。とにかく毒性が強く、刺されると毒が全身に広がり、急性症状を起こします。とくにアレルギー体質の人が刺されると、アナフィラキシー・ショックで死に至ることもある、危険なアリなのです」

 

このように警鐘を鳴らすのは、アリ研究の第一人者で、東京大学農学部応用生命科学研究科講師・寺山守先生(59)。今月13日、環境省は南米原産のヒアリが国内で初めて確認されたことを発表。中国・広東省から貨物船で神戸港に運ばれたコンテナ内でコロニー(巣)が見つかり、大量のヒアリが発見された。このニュースは瞬く間に全国へと広がり、大騒ぎに。

 

「ヒアリは体長2.5〜6ミリ。色は赤茶色。非常に攻撃的で人体に直接的被害を与えます。以前、台湾でヒアリの現地調査をした際、同行した男性研究員が指を数カ所刺されました。すると30分後、全身に水疱が広がり、45分後に体調が急変。1時間後には呼吸が苦しくなり、病院に搬送されました。成人男性でもこのような症状になるので、もしお年寄りや小さなお子さんがヒアリに刺されたら、どれだけのダメージを受けるか……」

 

寺山先生は、赤茶色の怪しいアリを見つけても、絶対に素手で触れないこと。そしてアレルギー体質でない人でも、刺されたらすぐに病院に行くことを勧める。

 

「ヒアリは、人が住んでいる環境になじむ性質で、土で大きな巣を作るのが特徴です。巣の中にいる1匹のヒアリの女王が、1日1,000〜1,500個の卵を産みます。これはアリの中でも破格の多さで、ものすごい繁殖力。1つの巣に数万匹の働きアリがいて、さらに別の女王アリが作り出される。そこからまた別の場所で巣を作り、どんどん増殖を繰り返す。上陸されて、一度定着してしまうと根絶することは非常に難しいのです」

 

そして、ヒアリ初上陸のニュースから1週間後、なんと同じ神戸港のコンテナヤード近くで、別の特定外来生物に指定されているアカカミアリが約100匹も発見された!

 

「ヒアリほどの毒性は強くありませんが、刺されたら人体に被害を及ぼす南米原産の危険なアリです。これまで国内では沖縄や硫黄島で確認されていましたが、今回、本土で初めて見つかりました」

 

まさに同時期に2種類のヤバいアリが本土に初上陸したわけだが、寺山先生は「これは神戸周辺だけの問題ではない」と強調する。

 

「大量のコンテナを扱う大きな港がとくに危険です。大井ふ頭、青海などの東京港、横浜港、名古屋港など、全国各地に上陸する可能性がある」

 

海外から入ってくるすべてのコンテナをチェックするのは至難の業。日本が“毒アリ地獄”にならないための対策はないのだろうか。

 

「たとえば空港にいる麻薬犬のように、ヒアリのにおいを嗅ぎ分ける“ヒアリ犬”を育てて、大きな港に配置するのも対策の1つです。すでにオーストラリア、台湾には“ヒアリ犬”がいます」

 

もう“たかがアリ”なんて言ってられない!

関連カテゴリー: