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「年末の大掃除というのは、宗教的、儀式的な意味合いが強いようです。本来、掃除に向いているのは暖かい時期で、欧米では『スプリング・クリーニング』といって、春の大掃除が一般的なくらい。窓を大きく開けても凍えることもありませんし、気温が高いほうが汚れも落としやすいからです。大掃除は、本格的な冬がやってくる前に済ませてしまうのが合理的。忙しい年末に心の余裕も生まれますよ」

 

そう話すのは、『All About 家事・掃除・子育てガイド』の藤原千秋さん。そもそもお掃除の由来は、江戸時代、年末に江戸城内で大々的な掃除を始めたのがきっかけという説や、家々に新年の幸せをもたらす「年神さま」を迎えるために家中をキレイにするなど諸説ある。これまで当たり前のようにやってきた年末恒例の大掃除だが、合理的に考えると、秋のうちに大掃除は終わらせておくのがベストだという。

 

「秋は大量のダニの死骸でアレルギー症状が出やすい季節。ですから、ダニが潜みやすい場所は、この時期に徹底して掃除に取り組みましょう。エアコンの内部、換気の悪いクローゼットの中や浴室などのカビ退治も秋のうちに終わらせて」(藤原さん)

 

暑い夏でもなく、寒い冬でもない……、その間にある「秋」ならではの“ちょうどよさ”を生かした、効率的な掃除のポイントを藤原さんが教えてくれた。

 

■衣替えはクローゼット掃除の絶好のチャンス

 

衣替えはしたものの、クローゼットや押入れの掃除はしていない、という人は多いのではないだろうか。ところが、こうした場所はいつも閉め切っているため湿気がたまりやすく、想像以上にダニとカビが繁殖しているのだ。

 

「衣類を食べる害虫・カツオブシムシも、冬物衣類の大敵。とくにカシミアなどの動物性の高級繊維などが被害に遭いやすいです。ダニをはじめ、こうした害虫はホコリの中に潜んでいるので、一度中のものを出してホコリ掃除を徹底しましょう。カビと疑われる汚れは消毒用エタノールを吹きつけた雑巾で拭き取りを」(藤原さん・以下同)

 

■エアコン内部の手入れは暖房として使う前に!!

 

エアコン内部の掃除は、冷房も暖房も使わない狭間の秋がチャンス。

 

「夏の間に内部でカビが繁殖しています。フィルターを外して表面のホコリを掃除機で吸ってから、スプレーで中性洗剤を吹きつけ、ぬるま湯ですすぎましょう。さらに陰干しした後、フィルターをセットし直し、1時間ほど送風運転を行ってください」

 

■寒さで活動が鈍る前にゴキブリを一網打尽

 

ゴキブリは、冬の間も暖かい冷蔵庫の裏などを拠点にして活動するので、寒くなってからも油断は禁物。

 

「ゴキブリの活動がまだ活発な秋のうちであれば、仕掛けたトラップにも引っかかりやすく効率的に駆除できます。今のうちにたたいておけば、冬の間の被害をかなり抑えられます。ホウ酸団子などの毒餌や市販の捕獲器具を活用しましょう」

 

■お風呂場のカビ対策は秋からでも遅くない!!

 

梅雨どきにカビ対策ができていなかった家庭は、秋の大掃除でしっかり取り組もう。

 

「秋のうちにカビを抑えておくと、乾燥する冬の間は掃除の効果が持続し、繁殖しにくくなります。とくに、排水口、タイルの目地、浴槽は入念に。天井に生えたカビには、ジェル状のカビ取り剤を塗布すると、垂れ落ちにくいので目に入るリスクが少なく◎。ピンク色の汚れは、カビではなく菌の一種。通常の洗剤では防ぎにくいので、『ピンク汚れ対応』の浴室用洗剤を日常使いして、日ごろから予防するのがおススメです」

 

また、密閉空間のユニットバスでは、アカや石けんカスをエサにして繁殖するチョウバエが発生しやすい。翌春に暖かくなって一気に繁殖するのを防ぐため、今のうちにしっかり落としておこう。

 

「一般に大掃除といえば、年末に取り組むもの。日本の年中行事のひとつでもあります。ですが、現実的な面から見ると、大掃除を冬の寒い時期にするメリットはほとんどありません。それどころか、汚れが落ちにくかったり、病気やけがのもとになったりと、デメリットだらけなんです」

 

「食欲の秋」「芸術の秋」「スポーツの秋」……。今年からは、ぜひ「大掃除の秋」もお忘れなく!

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