「私たちが調査した統計によると現代人の約80%が『かくれ不眠』です。特に、仕事に追われて睡眠を削ってしまっている人たちに多いようです。不規則な生活をしているのに、自分は寝なくても大丈夫、これは不眠ではないと思っているなど、睡眠に対して意識が低いのですね」
と語るのは、杏林大学医学部精神神経科主任教授の古賀良彦先生。「かくれ不眠」とは、単なる寝不足と不眠症の間に位置するもの。慢性的な不眠ではなく専門的な治療は必要ないものの、睡眠の悩みや不満をかかえ日常生活に影響がある状態で、この状態に気づかないうちに陥っている人が急増しているのだという。
古賀先生が所属する『睡眠改善委員会』では、「かくれ不眠」を5つのタイプに分類している。なかでも問題なのが、体力を過信した「自分は大丈夫」タイプと、十分な睡眠をとれず他人に当り散らす「高ストレス」タイプだ。
「睡眠時間は少なくても平気と過信している『自分は大丈夫』タイプ、そして良質の睡眠がとれないためにストレスとなっている『高ストレス』タイプ。これらは早急にライフスタイルを見直し、改善する必要があります」(古賀先生・以下同)
必要な睡眠時間は通常約7時間とされている。米国ではこれ以上長くても短くても死亡率が高いといわれているという。それでは、かくれ不眠を放置しているとどうなるのか?
古賀先生はこう続ける。
「最初に肌荒れや肥満といった症状が出てきます。睡眠時間が短いとグレリンという食欲を増進させるホルモンが出てくるので食べすぎてしまうのです。それが引き金となり糖尿病や高血圧にもなる。さらには心身症です。ストレスが原因で体の各臓器に病気が出てくることも。さらに眠れないと仕事でも失敗する。するとますます眠れなくなる。不眠症や場合によっては、うつ病にもなるでしょう」
「かくれ不眠」を解消する第一歩は「生活のリズムを意識する」こと。早起きして全身で朝日を浴びる。三度の食事は決まった時間に食べる(夕食は腹八分目に)。そして人とコミュニケーションを積極的に取ることが重要だ。
さらに、夕方からの過ごし方が睡眠の質を高めるという。お風呂は寝る2時間前までに必ず入り、湯上りは簡単なストレッチでリラックス。寝る前は、脳を活性化するテレビやパソコンは控えることで、「かくれ不眠」を撃退しよう。