今年4月から、スーパーのレジなどで、自分の預貯金から現金が引き出せる「キャッシュアウトサービス(以下・キャッシュアウト)」が始まった。銀行やコンビニに行かなくても、スーパーのレジがATM代わりになると注目されている。そこで、経済ジャーナリストの荻原博子さんがキャッシュアウトについて解説してくれた――。
キャッシュアウトを最初に導入したのは、イオンです。現在は、愛知、大阪、埼玉などの62店舗で利用でき、’20年までに約400店舗に広げるといいます。
使い方は簡単です。イオンでは、キャッシュアウトが利用できるレジは、おもにサービスカウンターにあります。そこに行き、銀行のキャッシュカードを店員に渡して出金額を伝え、自分で暗証番号を打ち込むだけ。出金できるのは、1,000円単位で3万円までです。
利用手数料は、今のところ無料です。ですから今なら、休日や時間外などは、銀行やコンビニのATMで出金するよりお得です。
また、店員が対応するので、機械が苦手な高齢者にも使いやすい。買い物ついでに出金できて、混んだ銀行ATMに並ばなくてすむといった声も聞かれます。
これはJデビットの仕組みを利用しています。Jデビットは、銀行のキャッシュカードで買い物代金などを支払う方法で、代金はその場で口座から引き落とされます。
キャッシュアウトも同じで、出金額をその場で口座から引き落とし、現金を店舗レジから受け取ります。口座残高の範囲内でしか買い物や出金ができないため、使いすぎる心配がないのも特徴です。
このほか、7月14日から、八丈島でもJデビットのキャッシュアウトが導入されました。
八丈島は東京都の離島です。現金決済が中心で、銀行やコンビニは多くありません。これまで、現地の事情を知らない観光客が、特に土日や夜間に現金が引き出せず、困ることが多かったのです。
八丈島では、町と提携したタクシーやスーパー、飲食店などで、キャッシュアウトが利用できます。ただ店舗によっては、1万円未満の出金で108円、それ以上だと216円の手数料がかかります。ご注意を。
今後は八丈島のように、銀行やコンビニの少ない地方で、ATMより設置費用の安いキャッシュアウトが広まっていくと思います。
さらに、横浜銀行やゆうちょ銀行と東急電鉄は、スマホ決済サービスの「銀行Pay」を利用したキャッシュアウトの導入を発表しました。来年春から、東急電鉄の駅券売機などで、スマホのアプリ画面をかざして現金を引き出すサービスを始める予定です。
日本はキャッシュレス化が遅れているといわれます。そこで、現金がなくてもどこでもカードで買い物できることに加え、現金が必要なときには近くの店舗でキャッシュアウトできる環境を作ることで、現金を持ち歩かない習慣を浸透させ、キャッシュレス化を進めたいのだと思います。
キャッシュアウトは、利用者にとっても便利なサービスです。ただ、手数料には注意して、計画的な利用を心がけましょう。