ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJ)は今月10日から、「価格変動制(ダイナミックプライシング)」を導入した。価格変動制とは季節や曜日、気候などから混雑具合を予想し、それに応じて価格を変えるというもの。そんな価格変動制について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた――。
■時期をずらして安く買えるなど選択肢も広がる
USJの1日入場券(大人)は、これまで年間を通して7,900円でしたが、1月10~31日は7,400円に値下げします。反対に、中国の春節で混み合う2月1日~3月22日は8,200円に、春休みの3月23日~4月7日は8,700円に値上げというように、時期により価格が変わるのです。
以前から、航空券やホテルの宿泊料などでは、閑散期は安く長期休みなどのある繁忙期は高い「季節料金」がおなじみでした。
しかしスポーツなどでは、対戦チームやスター選手の出場、優勝や個人タイトルがかかっているかなど多くの条件が、混雑予想に影響します。こうした集客に関するビッグデータをAIで解析し、価格に反映させようという試みが進んでいます。
いち早く取り入れたのは、野球の福岡ソフトバンクホークスです。一部エリアの料金で’16年に実証実験を始めたところ、売上げアップに結び付き、昨年、サッカーJリーグの横浜F・マリノスや名古屋グランパスにも広がりました。
スポーツでの価格変動制は、試合ごとにチケット料金が変わるだけではありません。販売開始後でも売れ行き次第で、チケット料金が変動します。
たとえば、昨年10月14日の横浜F・マリノス対鹿島アントラーズ戦。自由席は通常価格2,500円で販売を始めましたが、人気が高く翌日には4,100円に、その3日後には当初の3倍、7,500円まで高騰しました。同じ試合、同じ席種でも、買うタイミングによって料金が違ったのです。
そもそも価格とは、買いたい需要と売りたい供給のバランスで決まります。日本には以前「定価」がありましたが、グローバル化の中で約20年前に一部を除き、市場から消えました。今は「メーカー希望小売り価格」となり、買う店によって値段が違うのが当たり前です。
そこにAIが登場し、より細かい値決めが可能になって、これからは価格変動制の時代です。ますます多くの業界に広がるでしょう。
そうなると、あらゆるものが値上がりするのではと心配する方もいるでしょう。でもいっぽうで、閑散期は値が下がります。時期をずらして安く買うこともできる。選択肢が広がるということです。
USJなら、防寒対策をして今月行けば昨年よりお得。格安で楽しめるでしょう。スポーツで観戦したい試合が決まっていれば、早めにチケットを買うことも対策の1つです。
何より、標準的な価格を知っておいて、「私はどれだけのお金をかけるのか」という自分の価値観を決めることが大切です。価格変動制への流れはもう止められません。これからは上手に選べる時代を楽しみたいものです。