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長年連れ添い、よくも悪くも「当たり前」のような存在になっている夫という存在。そんな夫がある日突然、先立ってしまったら……。だが、途方に暮れていては乗り切れない。夫の死後に訪れる“現実”とは――。

 

突然、夫が亡くなった場合、「死亡診断書(死体検案書)」の発行、「死亡届」と「火葬許可申請書」の提出。さらにこの間、葬儀の手配も同時進行で行わなければならなくなる。しかし、手続きや法要が終われば一段落かと言えばそういうわけにはいかない。その後も世帯主や光熱費の名義変更などさまざまな手続きが必要だ。

 

そこで「生活費」に直結する事柄について、50代後半で18歳以上の2人の子どもがいる会社員の夫と専業主婦の妻をモデルに、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の大野高志さんが解説してくれた。

 

夫亡き後の「お金問題」の筆頭が「相続」だ。お金持ちではない人ほど、相続で争う可能性が高いという。

 

■借金も相続財産!

 

「相続財産は、土地や現金などプラスの資産に限りません。借金などのマイナスの財産も含まれるため、夫の借金が不安な場合は、信用情報の照会をしましょう。基本的には『CIC(Credit Information Center)』『JICC(日本信用情報機構)』『全国銀行個人信用情報センター』の3つに照会をかければ、金融機関等での借入状況はわかります」(大野さん・以下同)

 

相続には、プラスもマイナスも全部相続する「(1)単純相続」のほか、すべてを放棄する「(2)相続放棄」、プラスの財産の範囲内でマイナスを相殺する「(3)限定承認」の3種類があることも覚えておきたい。もし、マイナスの財産が多い場合は(2)か(3)の検討も必要だ。

 

「(2)または(3)を選択する場合は、原則、夫の死後3カ月以内に家庭裁判所へ申し出ないといけません。また、(2)の相続放棄は1人でもできますが、(3)の限定承認は相続人全員の合意が必要。この場合、妻のほか、2人の子どもの合意も必要というわけです。申述書の提出が必要なので、司法書士などに相談するのが一般的です」

 

うっかり3カ月を過ぎてしまうと、借金も相続せざるをえないので気をつけよう。

 

■銀行口座やクルマも相続財産

 

また、夫の銀行口座や愛車も「相続財産」の対象に。

 

「そもそも故人名義の銀行口座は、死亡が確認されると自動的に凍結されます。仮に夫が『葬式は自分の預金で』と言い残したとしても、夫の死後、遺族が預金を下ろすことはできません。手続きには相続人の署名と実印が押された遺産分割協議書や戸籍謄本などが必要になるので、こちらの準備も早いほうがいいでしょう」

 

「ならば、夫が亡くなったことを銀行に知らせる前に預金を下ろせばいいのでは?」と思うかもしれないが、そうすると、その後、万が一、夫の借金が発覚しても相続放棄ができなくなる。不用意に手を付けないほうが得策だ。

 

また、夫の愛車も相続財産の一つ。放置すれば自動車税などがかかるので、早めに対処しておこう。

 

「クルマの場合は売却するにしろ廃車にするにしろ、名義変更が必要になります。その際、やはり遺産分割協議書が必要になります」

 

遺産分割協議書に所定の様式はないが、誰の遺産なのか、相続人は誰なのかといった明記すべき事項がある。

 

相続税の申告も死後10カ月以内と定められているため、手続きが難しいという場合は、税理士に相談してみるのもいいだろう。

 

「いずれにしても、夫が元気なうちに準備、整理しておけることがほとんどです。特に、公正証書遺言書を作成しておけば、相続の問題は激減するはず」

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