「まだまだ俺は運転できる!」。そう言い張って、なかなか免許返納に動いてくれない親は多い。そんな親には、安全面だけでなく、“経済面”からもアプローチしていこう!
「若いときと比べて、ちょっと反応が鈍いなと感じたら、人を傷つけないうちに返すのが賢明かと思う」
6月7日、俳優の杉良太郎さん(74)が高齢者の悲惨な事故が続くなかで、自身の運転免許を自主返納した様子は大きく取り上げられ、“杉様に続け!”“これが高齢者ドライバーのお手本”と、称賛の声が多く上がった。
「高齢者の免許返納への機運が高まってはいますが、警察庁によると、75歳以上の免許保有者の返納率は5%程度。まだまだ多くの高齢者は車を運転しているのが現状です」(社会部記者)
免許返納に関しては、都市部と地方に住む人たちとの事情は大きく異なる。とくに地方では、高齢者の移動手段の“足”として、車は生活に欠かせない。だが、「事故が起こったからでは遅い」と、親に免許を返納させようと説得する子どもは多いはずだ。
「私の場合、83歳の父親を説得しようと試みたのですが、当初はなかなか納得してもらえず……。決め手になったのは、“返納することでこれだけお金が浮くよ”と話したことでした」
こう語るのは、東京都在住の男性Aさん(53)。
「父親に認知症の初期症状が見られた当初は“まだまだ運転には自信があるんだ!”と言って聞き入れてくれませんでした。そこで、車を処分した場合に浮かせることができる、年間維持費について説明したんです。コンパクトカーに乗っていた父親の場合、年間約60万円を維持費として支出していました。『車を手放せば毎年約60万円がそのままほかのことに使えるし、売れば約100万円で下取りもしてもらえる。今年だけで160万円を捻出できるんだ』と説明し、ついに父親は納得。車検代や駐車場代などの維持費は、それまで父親にとって“当たり前”の出費でしたから、お金が浮くことは盲点だったようです」
同じく、都内に住む40代の主婦Bさんも親に免許を返納させることで、浮いた維持費をためていると話す。
「母親(75)は、週2回の通院に車を使うのみでしたが、都内はとにかく駐車場代が高く、軽自動車1台でも年間50万円以上かかってしまうんです。『通院をタクシーに替えても、いま持っている車さえ手放してしまえば毎年15万円近くためられるよ』と話しました。今後親が車いす生活になることも考えて、バリアフリー工事の資金としてためています」
一般的にマイカーにかかる維持費をまとめたもの(自動車保険は6等級/30歳以上/車両保険なしを想定。駐車場代は「駐車場ネット」から東京都23区の平均値を計算。燃料代はガソリン代を135円/リットル、月に1回「満タン」にした場合を想定)を見てみると、仮に親が75歳で返納し90歳を迎えた場合、コンパクトカーを処分すれば約950万円、ミニバンなら約1,000万円浮くことに。
老後への“説得材料”として、親の自動車維持費がどれだけかかっているか、把握することから始めよう。