「老後2,000万円不足問題」で一躍クローズアップされた年金・給付金。制度は複雑だが、実は思わぬ「裏ワザ」が! そんな「裏ワザ」を経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた。
「老後2,000万円不足問題」から、年金への注目度が上がっています。ですが、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」の改訂は、大きく報じられていません。
年金の受け取りは原則65歳からですが、60~70歳の好きな時期から受給できます。ただ、受給を65歳より早く「繰り上げ」ると0.5%×早めた月数分年金が減額され、65歳より遅く「繰り下げ」ると0.7%×遅らせた月数分増額されます。
改訂版ねんきん定期便には、70歳まで繰り下げると受給額が増えることを図で解説。いっぽうで、繰り上げの図はありません。政府は繰り下げのお得感を強調し、当面の支給額を減らせる繰り下げに誘導したいのでしょうか。
ですが、繰り下げが必ずしも得だとは言えません。年金を賢くもらう裏ワザを紹介します。
■加給年金
「加給年金」とは、厚生年金に20年以上加入した人が、65歳で年金を受給する際、年下の妻や18歳未満の子どもがいたら受け取れるもの。いわば、年金の「家族手当」です。妻の年収が850万円未満などの条件を満たすと、妻が65歳になって自分の年金を受け取るまで、夫の年金に加給年金がつきます。
妻への加給年金は、年22万4,500円。特別加算と合わせると、年39万100円になり、月額では約3万2,500円受け取れます(夫が’43年4月2日以降生まれの場合)。
ただし、夫がすべての年金を繰り下げてしまうと、加給年金は受け取れません。妻が5歳年下なら、年約39万円×5年=約195万円もの加給年金が一切受け取れない、残念な結果になってしまいます。
【裏ワザ】年金を分ける
厚生年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建て、2つの年金は分けて受給でき、加給年金は老齢厚生年金に付随する制度です。
年金すべてを繰り下げると加給年金はもらえませんが、年金を分け、老齢厚生年金を65歳から受給すれば、加給年金ももらえます。そのうえで老齢基礎年金だけを繰り下げれば、年金額を増やすこともできます。