「住居費や、生活費のある部分を共有できる二世帯同居には経済的なメリットが多くありますが、いっぽうで、お金にまつわる“落とし穴”も少なくありません。後々もめないため、同居前からの勉強やルール作りは不可欠です」
こう語るのは、二世帯同居世帯の家計相談を受けることも多いファイナンシャルプランナーの北見久美子先生。二世帯住宅で特に気をつけたいのが固定資産税と相続税だという。
実際、都心に住むある主婦からは、「お舅さんの没後、お姑さんが名義を夫に変更したため、大変な額の固定資産税が……」という相談があったそう。
「この相談者の方は、多額の固定資産税が発生してしまうことに不満を訴えていましたが、同時に、資産価値の高い不動産を相続したわけですから、むしろ感謝してもいいくらいなんですよ」(北見先生・以下同)
このように、税金に対する知識が当事者間で共有できていないと、せっかくの善意が、筋違いの恨みのタネにもなりかねない。
また、水道・光熱費、あるいは生活費をどう折半するか、といった家計のルールは、一度決めても定期的に見直すことが大切だと北見先生は言う。
「家計にかかる費用というのは、それぞれの世帯のライフステージに合わせて変わっていくもの。どちらかの世帯が『割を食っている』と感じないためにも、負担額の定期的な見直しは欠かせません。『同居記念日』を設けて、毎年その日を見直しのタイミングにするのがおススメです」
ただし、生活費の分担額を見直す際には、その根拠が「なんとなく」ではお互いにいっそう不満が募るもの。そうならないためにも、同居をはじめる前からしっかりと家計簿をつけ、同居の「前」と「後」でそれぞれの支出がどのように変化したのかを把握しておきたい。
さらに北見先生が「要注意」と強調するのが住宅ローンだ。たとえば北見先生への相談ではこんなケースもあったという。
長男がローンを組み、両親の土地に二世帯住宅を建てたものの、嫁姑の折り合いが悪く、長男夫婦はそれがもとで離婚。長男もその後家を離れてしまい、ローンの返済が不能に。結局、せっかくの二世帯住宅は競売にかけられてしまう結果に……。
「お姑さんはお孫さんたちとの幸せな同居生活を夢見ていたのに、とてもお気の毒なケースです」
たしかに二世帯同居には、経済的なもの以外にもたくさんのメリットがあるが、そこで暮らすのは、あくまでも不器用な「人」である。当然、同居での生活がうまくいかないこともある以上、どこかに「引き返す」余地を残しておく必要があるのだ。
背伸びして手に入れた二世帯住宅が原因で、「金の切れ目が縁の切れ目」となってしまっては、元も子もない。これから二世帯住宅を検討している人は、くれぐれもご注意あれ。