「親が死んで、はじめて互助会で葬儀費用を積み立ていることを知って……積み立てていたお金は戻ってくるのかしら」(50代主婦)
「葬儀社が運営する互助会で、親は30万円満期の積み立てをしていたようですが、いざ葬儀となると会員用コースは、見栄えも悪く、花もない。あれよこれよとオプションをつけられてしまい、結局のところ葬儀費用はその5倍もかかってしまいました」(40代主婦)
葬儀や結婚式でかかる費用のために、月払いでお金を積み立てておくことができる、冠婚葬祭互助会(以下、互助会)。戦後間もないころに、共同でお金を出し合い、会員同士で助け合う“相互扶助”の考えに基づいて作られたシステムだ。
主に自社式場を持つ大手葬儀社が運営しており、加入契約数は現在2,280万件以上。全国で5人に1人が利用している計算だが、冒頭のような苦情やトラブルが絶えないという。兵庫県の葬儀組合が立ち上げた「互助会問題を考える会」事務局長の永島敏幸さんは、続出するトラブルについてこう語る。
「いまでも、全国から毎月10件前後の相談を受けます。戦後にできたサービスですから、会員は減り続けるいっぽうですが、互助会は会員から集めた会費を運用し、斎場の建設費や維持費、人件費に充てたりしています。そこで、会費以外の収入を稼ごうと、葬儀費用を高くつけたり、高額な解約手数料を請求したりと、横暴な営業が行われることもあるんです」
そこで、「考える会」に届くよくあるトラブルと、その解決法を永島さんに教えてもらった。
【ケース1】親が入会していた互助会に電話してもつながらない
互助会に毎月3,000円を満期まで積み立てていた70代の親を持つAさん。親の葬儀を執り行うため互助会に電話してみたがつながらない。もしや倒産し、積み立てたお金がパーになったのでは……?
「じつは、互助会が倒産した、というケースはほとんどありません。ただ、葬儀社は吸収合併を繰り返しているため、会社名や電話番号が変わることもありえます。互助会に入会していることが確実であれば、『全国冠婚葬祭互助会連盟』(全互連)か『全日本冠婚葬祭互助協会』(全互協)がデータを持っているはずですから、頼ってみましょう」
【ケース2】途中解約をしたいと伝えたが、とりあってくれない
8年前に互助会の契約を結んだ70代のBさん。近所の葬儀場を使いたいと気が変わり、解約することに。手続きの書類郵送をお願いしたが届かず、半年が経過して困っている。
「“解約渋り”はよくあるパターン。催促の電話をしてもたらい回しにされることもあるようです。まったく進展しない場合は、互助会問題の管轄である経済産業省の相談窓口や消費生活センターに事態を説明しましょう」
解約の際は、積立額の全額返金ではなく、約款に定められた解約手数料が差し引かれる。
「手数料は平均して15%とかなり高額。昔は25%という互助会もザラにあったので、経産省の働きかけによって、これでもマシになったのですが……」
【ケース3】積立額ではとうていまかなえない葬儀費用を要求された
父親から「50万円を互助会で積み立てている。いざというときは、それで葬式を」と聞いていた長男のCさん。
積立金で葬式ができると安心していたが、実際には、「祭壇は80万円から。料理も増やしたほうがいい。棺もランクアップできる」とオプションがかさみ、優待価格どころか、追加で150万円を請求された。
「まず、葬儀費用を全額まかなえる互助会プランはほぼありません。ただ、互助会を運営する葬儀社に、望んでもいない100万円単位の豪華な式を挙げさせられたという苦情は後を絶ちません」
結婚式と違い、急を要する葬式は、業者の言われるがままになりがちだ。
「事前に互助会に出向き、葬儀の見積もりを出してもらうことがいちばんの対策です。地方で家族葬を行う場合は、総額80万円程度の葬式が一般的でしょう。見積もりを拒んだり、“心配しなくて大丈夫ですよ”などと濁すような互助会は、いざ葬儀となったとき態度が急変することもありますので、解約してしまってもいいかもしれません」
親がせっかく積み立てたお金をムダにしないように、まずは入会の有無の確認を。