(撮影:永田理恵) 画像を見る

生活評論家であり、働く女性の支援活動も行う樋口恵子さん(87)。長らく第一線で仕事を続けてきた樋口さんも、自身の寄る年波をひしひしと感じているのだとか。

 

「みなさんよく『ピンピンコロリといきたい』とおっしゃいますが、私のまわりを見ても、思いどおりの最期を迎えられる人はそうはいません。誰しも、あちこち痛めながら、ヨレヨレになって人生を終えています」

 

樋口さん自身も70歳を過ぎたころから、体のあちこちが思うように動かなくなり、「それまで当たり前にできていたことがそうではなくなるのだ」と自覚するようになった。

 

「80歳を過ぎ、さらにガクンときた感じがします。たとえば『朝起きる→おなかがすく→食事の支度をする→食べる』という一連の流れが当たり前だったのに、目覚めても食欲がわかなくなったのです。調理するのもおっくうになり、今思っても、あれは軽い“老後うつ”でした」

 

人間が生きるうえで持つ、「ごはんを食べたい」「外に出たい」というごく素朴な欲望が、年をとると、低下、枯渇すると樋口さん。

 

「5分歩くのも大変で、肉体的にも精神的にもヨタヨタヘロヘロ。私はこれを“ヨタヘロ期”と名付けました。この時期に大切なのは、自分がヨタヘロ期にいることを自覚し、何事にも『エイヤッ!』とかけ声をして取り組むことです」

 

さらに、樋口さんが中高年世代の女性に訴えたいのが、既婚者は簡単に離婚をしないこと、働ける限りは仕事を続けること、この2つだという。

 

「男女平等がうたわれて久しいですが、日本の労働条件も年金制度も、残念ながら何十年もの間、男性優位に作られていますし、非正規雇用が断然多いのも女性です。また、女性同士でも、安月給で出世もできず、子育てや介護のためこま切れで就労する人より、サラリーマンの専業主婦のほうが、むしろ優遇される仕組みになっています。その専業主婦も、夫を見送った後はガクンと年金が減りますし……」

 

“かくて、女は貧乏に生まれるのではなく、女の生涯を生きることで老いて貧乏に落ち込むのだ”という格言を用いて、樋口さんは「BBB」=「貧乏ばあさん防止策」を呼びかけている。

 

「働ける人は、できる限り仕事を続けてください。介護離職なんてすると、自分の老後が大変なことになってしまいます。これからしばらく、日本は中高年層の雇用促進を目指さざるをえない時代が続くでしょう。50代にとっては、正社員になれるラストチャンスでもあるのです」

 

「女性自身」2020年4月14日号 掲載

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