画像を見る

「コロナによる外出自粛を機に、これまでよりも、夫婦でいっしょに過ごす時間が増え、ケンカをする頻度も増えていると聞きます。それを劇的に改善する方法は、いっしょに映画を見ることです」

 

こう話すのは、映画好きで知られる心理研究科の御瀧政子さん。えっ、いっしょに映画を見るだけで夫婦仲が改善するんですか?

 

「映画というのは、そのほかの総合芸術に比べても、作る時間、人材、資金が膨大にかかっています。それが2時間前後に集約されて、しかもDVDソフトなら、繰り返し見ることができる。単に画面に向かっているようで、じつは目、耳、肌感覚など、人の五感を通して、大きなエネルギーに包まれているんです。夫婦で、それを共有することで、お互いに対する思いが確実に変化するんですよ」

 

ひとくちに不仲と言っても、その原因はさまざま。そこで、今回は不仲の原因を分類。年間百本以上の映画を見ているという御瀧さんが、それぞれの不仲の原因を改善するのにマッチする映画ベスト3を厳選。

 

■「大ゲンカしてしまった夫婦」向け

 

【1位】『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』(2011年/蔵方政俊監督)

「夫婦というのは、感謝の気持ちをうまく表現できず、自分の思いを押しつけてしまいがちです。定年はひとつのゴールで最終ゴールまでまだまだ人生は長いことを教えてくれています。電車の終点は折り返せば始発になるように。この映画は、感謝を自覚すれば、いくらでもやり直すチャンスは残されていて、あきらめなければ大丈夫と励まされるはずです」(御瀧さん・以下同)

 

【2位】『間奏曲はパリで』(2015年/マルク・フィトゥシ監督)

「妻のちょっとした冒険を、心配しつつも大きな度量で結局は許し、受け入れる夫。そのことで相手を責めることなく、二人ともが自分の中で消化して、日常を続けていこうとすることが大切と受け止める。詮索しすぎない。おたがいが愛していることを忘れない。何が自分にとっていちばん大事かをわかっていれば、いっしょなら、また楽しい日々が続けられると思わせてくれます」

 

【3位】『アデライン、100年目の恋』(2015年/リー・トランド・クリーガ監督)

「普通の暮らしができないことがいかにつらいか。ともに老いていけることはありがたいと気づかされます。静かに暮らすためにあらゆることから逃げてきたが、もう逃げないと決めてから人生が変わっていく。人生に勇気を持つこと。自分で選んだ道を後悔しないこと、そしてともに歩んだ人への感謝をすること。そうすれば、つまらないケンカなどは、問題にならないことがわかります」

 

大ゲンカのあとは、頭に血が上っているので、「お互いを客観視できる映画が夫婦仲の回復に向いています」と御瀧さん。

 

「そこで、夫婦の間での感謝の気持ちをお互いに共有できる作品を選びました。とくに『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』は、すれちがう夫婦を演じる三浦友和さんと余貴美子さんの巧みな演技で思わず引き込まれるはずです」

 

■「関係がギスギスしている夫婦」向け

 

【1位】『ビューティフル・マインド』(2001年/ロン・ハワード監督)

「『ゲーム理論』の研究者として1994年にノーベル経済学賞に輝いた数学の天才が主人公。苦しみながらでも、その先には報われることが必ずあると信じることが大切だと教えてくれます。結婚したころの彼を思い起こせば、そこに私の愛した『彼』がいる、と覚悟と決意を見せる妻。周りの人はあなたの味方なのだから孤立しないこと。理解が大切で、そこから夫婦関係は立ち直ることができるはず」

 

【2位】『奇跡のリンゴ』(2013年/中村義洋監督)

「笑えるのは人間だけが持つ特性です。誰もやろうとしない非常識なリンゴ栽培に挑戦する夫。妻や義父、娘たちの理解や協力を惜しまない姿に支えられ、迷った11年間のガマンの末、ようやく実りが。そのつらく、苦しい日々も、妻にしてみれば1日1日がかけがえのない宝物だったと感謝。夫婦の絆を改めて感じることができると思う映画です」

 

【3位】『ボクの妻と結婚してください』(2016年/三宅喜重監督)

「世の中のことを楽しいことに変換したいと、自分の人生、最後の企画を考える夫。妻のために自分ができることを、精いっぱいしてあげたいと奔走します。日ごろからある感謝の気持ちを、夫婦はなかなかうまく表現できないものだということがわかってきます。それがわかれば、やれることは、いつかではなく、今しておこうと思わせてくれます」

 

もともと夫婦は赤の他人。円滑な関係を保つには、理解と忍耐と許しが必要。

 

「『ビューティフル・マインド』は非常に大きな我慢を妻に強いますが、それを乗り越えて、最後は感謝の気持ちで結ばれる物語。夫婦で見れば、絆が生まれ、これまでとは違った関係になれるはずです」

 

巣ごもり時間の映画観賞で、冷え切った関係を改善しよう。

 

「女性自身」2020年7月7日号 掲載

【関連画像】

関連カテゴリー: