「できないのは恥」ゴミ出し困難を隠したがる高齢者の実態
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年を重ね、身体機能や認知機能が衰えることにより、ゴミ出しができず、家にため込んでしまう。そんな“ゴミ出しができない高齢者”が問題になっている。

 

環境省は’19年にゴミ出し支援に関する全国調査を実施。回答を得た1648市区町村のうち、ゴミ出し支援を行っているのは23.5%だった。回答した自治体の87.1%が「高齢化でゴミ出し困難な住民が増える」と危機感を抱く。

 

「高齢になると、誰もがこれまで普通にできていたことができなくなります。ゴミ出しもその1つ。特に、地域のゴミ置き場までゴミを出しに行く『ステーション回収』は、高齢者にとっては負担が大きい。何とか歩くことはできても、片手に重いゴミ袋を持って置き場まで歩くのは無理という高齢者も多いのです。また、ふだんはなんとか出せていても、雨や雪ではゴミを出せずため込んでしまう、というケースも。近所の人や子どもに頼めば、と思うかもしれませんが、ゴミ出しは買い物と違って頼みにくいと感じる人が多数です。さらに、認知機能が衰えてくるとゴミの分別が難しくなります。分別ができないことで隣人とトラブルになり、ゴミが出せなくなる人も。その状態が続けば、当然いつかはゴミ屋敷になります」

 

そう話すのは、『ルポ ゴミ屋敷に棲む人々』(幻冬舎)の著者で、公衆衛生看護学の専門家・岸恵美子東邦大学大学院(看護学研究科)教授だ。本誌では、岸先生監修の下、ゴミ出し困難に陥る危険性のある世帯数を試算した。

 

世帯主が75歳以上で、高齢者自らゴミ出しを行わなければならない、単身世帯、夫婦のみ世帯の数は、’25年には約858万世帯となる(国立社会保障・人口問題研究所’18年『日本の世帯数の将来推計』より)。75歳以上で、要支援の認定を受けた人、要介護認定を受けた人の合計割合は31.9%(令和2年版高齢社会白書より)。

 

つまり、’25年には858万世帯の31.9%である約274万世帯でゴミ出し困難になると予想される。また、この数字を全世帯において換算すると、全国で19.6世帯に1世帯が、ゴミ出し困難に陥るリスクを抱えるという結果となった。

 

このような状況の中、すでにゴミ出し支援に乗り出している自治体もある。

 

’00年から「ひまわり収集」というゴミ出し支援サービスを実施しているのが神戸市。今年9月時点で1,389世帯が利用中だという。

 

「ひまわり収集は、65歳以上の高齢者で一人暮らしの方など、ゴミをステーションまで運べない人を対象に、市の職員が家の玄関先までゴミ収集に伺うサービスです。収集日にゴミが出ていないときは、支援者の人に連絡するなどして安否確認を行っています」(神戸市環境局)

 

ゴミ出し支援のサービスを受けるには、自治体への「申請手続き」が必要。支援の対象になるかどうかなどが判断される。

 

「ひまわり収集を利用する場合、まずは高齢者本人を支援されているケアマネジャーや市の『あんしんすこやかセンター』に、ゴミ出し支援の相談を行っていただきます。支援対象となる高齢者の要件は、ゴミ出しが困難とされ、かつ、65歳以上の一人暮らしで、要介護1以上であることです」(前出・神戸市環境局)

 

神奈川県横浜市が行うゴミ出し支援制度は、要介護・要支援の認定を受けていなくても、65歳以上でゴミ出しが困難であると求められれば支援対象になる。’17年度の利用者は6,947世帯だ(環境省「高齢者ごみ出し支援制度導入ガイダンス(案)」より)

 

全国の自治体に広がりつつあるゴミ出し支援のサービスだが、こうした制度の存在を知らない人も多いのではないか。

 

障害がある、要介護状態であるという場合にはゴミ出し支援制度をケアマネジャーが提案してくれることも多い。しかし、要介護まではいかないが少し体力が落ちてきた、けがをした、などの場合はゴミ出し困難な状態が見落とされてしまうことも。

 

さらに、私たちの親世代は、ゴミ出し困難な状態が周りに発覚しづらい世代だという。

 

「現在の高齢者は、プライドが高い人が多い。『子どもに迷惑をかけるのは恥』と、困っていても助けを求めない人が多いのです」(岸先生)

 

「女性自身」2020年12月15日号 掲載

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