相続トラブルを避ける唯一の道は、親が生きている間に準備をすること。「あの森永さんも地獄だったらしいよ」と本誌を口実に、家族で話し合ってみてはーー?
「親が存命の人であれば、相続の問題は決して人ごとではないはず。けれど、相続に関して無頓着である人は少なくありません。じつは私自身も父の死後“相続地獄”に陥ってしまったんです」
こう語るのは『相続地獄』(光文社)を出版したばかりの、経済アナリスト・森永卓郎さん(63)だ。
森永さんといえば、かつて本誌の取材でも「ケチと呼ばれることを恐れず、楽しく生きる」とケチ哲学を提唱。ロケ弁を多めに持ち帰る、スーパーの半額シールを狙うなど、徹底した節約生活ぶりを発信してきたが、意外なことに、相続対策はしていなかったという。
「父が生きている間、相続に関して、何も考えていなかったんです。当時は知識がなく、どこをケチればいいかも、わかりませんでした。父が亡くなってから、財産を把握したり、遺品整理をするのは本当に大変で……。相続地獄を味わった身として、親の存命中に相続準備をすることの大切さを痛感しています」
森永さんいわく「ケチは情報と知識の積み重ね」。“相続地獄”にハマりお金も労力も無駄にしてしまった森永さんに、たとえケチと言われても、親の存命中にやっておくべき準備を聞いた。
■介護費用など立て替えの記録はつけておこう
資産のある親の生活・介護費用の立て替えは、記録していれば相続税控除の対象になることが多い。
「そんなこと知りませんでしたから、一切記録せず、領収書やレシートも保管していませんでした」(森永さん・以下同)
同居を始めたときから、父の生活にかかる費用はほとんど森永さんが立て替えていたという。
「父とは母が亡くなった’00年から同居を開始。’06年に父が脳出血の後遺症で半身不随になってから、がんが見つかって介護施設に入るまでは在宅介護を行っていました。『卓郎は稼いでいるんだから、とりあえず払っておいてくれ』と言われてしまい……」
仕事やふだんの生活ならしっかりケチれるが、親となると、お金の管理がルーズになってしまった。
「そもそも、親の生活費は親に払ってもらうべきだったと思います。介護施設に入ってからは、多少払ってくれるようになりました。しかし、父が使っていた口座の預金が底をついてからは、ほかの通帳がどこにあるかわからないからと、また私が立て替えることに。亡くなるまでの11年間で、少なくとも2,500万円は立て替えたんじゃないでしょうか」
介護は森永さんの妻が行っていたが、いざ遺産相続となると、弟と財産を折半することになった。
「感情的に納得がいかない部分はありましたが、妻はお金でもめて親族と“争族”にしたくないという考えでした」
きょうだいの一人に負担が集中しがちな介護は、どのように分担し、その費用や労力をどう評価するのかを、事前に一族でしっかり話し合う必要があるのだ。
「女性自身」2021年2月23日号 掲載