人生100年と言われる時代。定年を過ぎた後も長い時間を快適に過ごすためには、“定年前”の心構えがとっても大切。過度な楽観は禁物ですが、決して悲観しすぎることもありませんーー。
夫が定年を迎えたら、そのときに入る退職金で海外旅行をしたい、ブランドもののバッグを買いたいなどと、使い道をあれこれ考えたことはないだろうか?
「多くの人が、『退職金は長年働いた自分へのごほうび』と勘違いしていますが、あくまでも『給料の後払い』です。数千万円という単位で振り込まれた通帳を見ると、豪華な旅行に出かけてしまったり、投資をしてしまったりして、病気や介護が必要なときにお金がない、という話をよく聞きます。定年後にまつわる“勘違い”をなくして、”定年前”の今から夫婦で準備をすれば、安心した生活を送ることができますよ」
そう語るのは経済コラムニストで、著書に『定年前、しなくていい5つのこと「定年の常識」にダマされるな!』(光文社)がある大江英樹さん。大江さんは、自身が大手証券会社に定年まで勤務した経験をもとに、資産運用やライフプランニングに関する講演や執筆活動を行っている。
大江さんによれば、“定年前”の準備は定年のタイミングの5年前には着手しておくことが、快適な老後につながるという。
男性が家事をするシーンは昔に比べれば増えてはきたが、夫婦間で衝突が起こる原因にも。
「妻が『もういい』と思うよくあるシーンは、夫が凝った料理を作りたがること。材料にお金をかけても、後片付けはしない人が多いので、『台所は触らないで』となってしまう。夫も単なる趣味としてではなく、妻の負担を減らすことを心掛けるべきでしょう」(大江さん・以下同)
そこで、定年前の「家事」の準備について大江さんが解説してくれた。
■やるべきこと
【「お金で時間を買う」生活をやめる】
料理をする時間がないときは、つい外食やスーパーのお総菜、弁当を買って食べていたが、定年後その生活を続けてしまうと、老後の家計をジワジワ圧迫する要因に。
「時間があるからこそ、自炊をすると食費を減らせます。共働きで掃除などを家事代行に頼んでいたケースでも、自分たちでやるように切り替えましょう」
【はじめのうちは夫の家事でのミスは割り切る】
洗濯物のたたみ方やしまい方を間違うとつい「そうじゃない!」と文句を言いたくなり、妻は「自分がやったほうが早い」と思ってしまうが、それでは意味がない。
「家事のやり方が違っていたら、違いを説明すると夫は理解します。夫ができることから少しずつ増やしていくと将来的に妻の負担が減るでしょう」
■やってはいけないこと
【家での食事は“三食妻が作る”ルールに】
外食しようとすると「ごはんは?」と夫に聞かれてカチンときた経験がある人も多いはず。
「妻が夫の食事を用意するのが当然という習慣は、定年までに撤廃しておきたいところです。最初は作り置きをしておく、『好きなものを食べて』とお金を渡すなどの工夫が必要ですが、このような定年前の準備が、快適な老後には欠かせません」
【名もなき家事を無理強いする】
「名もなき家事」は全部をやってもらうのは、衝突を生む原因にもなり、残念ながら無理。夫にはできるところから1つずつトライしてもらおう。まず「洋服は脱ぎっぱなしにするのではなく片付ける」、といったところからお願いしてもらってはどうか。
「定年後、夫婦で過ごす時間は長いので、家事はできることからやってもらい分担しましょう」
日常生活の中でちょっとした手間がかかる作業「名もなき家事」は、主に次のようなもの。
・裏返しに脱いだ衣類、丸まったままの靴下をひっくり返す
・玄関で脱ぎっぱなしの靴の片付け。下駄箱へ入れる/靴をそろえる
・トイレットペーパーの補充/交換
・脱ぎっぱなしを片付ける。クローゼットにかける/脱ぎ捨てた服を回収して洗濯カゴへ入れる
・食事の献立を考える
ごみの片付けひとつでも手順があり、夫はわからない。ごみ箱に袋をセットすることから始まり、ペットボトルはキャップとラベルを外し、中を洗って水を切る、といった手順があり、妻側はこれらを根気よく伝える努力が必要だ。
「私も『名もなき家事』リストを見て、家事は料理、掃除、洗濯以外にもたくさんあるのだと気付き、食後の食器洗いと片付けから始めました。掃除は妻に任せがちですが、風呂やトイレの清掃は私がやっていますし、洗濯も私がやることが多いです」
「女性自身」2021年3月9日号 掲載