「高齢者施設探しはいわば情報戦。単にお金をたくさん持っている人より、良質な情報を得られる人に有利なのです」
そう話すのは新聞・雑誌、ウェブなどに多数の連載を持つ、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんだ。最近は「高齢者の住まい」に関する相談も多く、畠中さんが実際に足を運び「ここなら!」と思った施設を、相談者に紹介する機会も増えているという。
「独身で働いてきた方や、配偶者を亡くした方が70歳前後になり、だんだんと家事をするのがつらくなって施設を探し始める、というケースが多いですね。介護認定を受けてから探そうとしても、認定後にたくさんの施設を見学するのは難しいため、少し早めに70歳前後から準備することをおすすめしています」
なかでも「国民年金で入れるところを」という相談者に畠中さんがおすすめしているのが「ケアハウス(軽費老人ホームC型)」だ。
「あまり知られていませんが、以前から私が注目しているのがケアハウスです。ある雑誌でケアハウスのメリットを紹介したところ、読者から『そんないい施設があるわけないだろう!』とクレームをいただいたこともあるくらい(笑)。情報のない方には信じられなかったのでしょう」
畠中さんによれば、よいケアハウスと出合うことができれば断然お得に老後の生活を送れる、ということなのだが、そもそも高齢者施設にはどんな種類があるのかおさらいしておこう。高齢者施設全般に詳しいタムラプランニング代表の田村明孝さんはこう解説する。
「ひとことで高齢者施設といっても、その種類はさまざま。介護の要不要や、首都圏などの都市部か地方なのかでも、かかるお金は全然違ってきます。まずは予算との相談になりますね」
■主な高齢者施設の違い
【有料老人ホーム】
一般に「老人ホーム」と聞いてまず思い浮かべるのがこちら。充実した施設や行き届いたサービスが提供されるが、まとまった一時金や高額な利用料が入居のネックに。
【サービス付き高齢者向け住宅】
まだまだ元気な高齢者向けの施設として近年増えてきている「サービス付き高齢者向け住宅」は、24時間管理人が常駐している「高齢者向けマンション」といった趣だが、利用料は全額自己負担。
【ケアハウス】
三度の食事も付くうえに、自己負担が手ごろな金額で抑えられるとしておすすめなのが「ケアハウス」。老後の生活資金に不安がある人にとっては穴場的な高齢者施設だ。
【特別養護老人ホーム】
利用料は安く抑えられるものの、利用は要介護3以上で、厳しい収入制限があるので、利用のハードルは高い。また、入居希望者が多く、簡単には順番が回ってこない。
田村さんによれば、予算が潤沢にあるならば最初の選択肢にのぼるのは、ハード、ソフトの両面で充実した民間経営の「介護付き有料老人ホーム」だという。ただし、入居一時金や月額の使用料が高額なところが多く、資金面のハードルは高いといえる。
また最近増えているのが、自立はできるものの、家事や見守りなどの面でサポートが必要という人向けの「サービス付き高齢者向け住宅」。
こちらは「介護付き有料老人ホーム」に比べて安価なことが多いが、原則として費用はすべて自己負担になるので、年金暮らしの高齢者にとっては、やはり気軽に入居しづらい。
そこで狙い目となるのが「ケアハウス」。地方自治体や社会福祉法人が運営するケアハウスは、整備の補助金が出るので利用者の家賃相当が安くなり、予算に不安がある人にとっても、手が届きやすい施設なのだ。
「ケアハウスでは整備費用の4分の3が国からの補助金でカバーされるので、利用者にとってはとても安心。ただし、ネックとなるのは、その数があまり多くないことです。特別養護老人ホームは最近増えていますが、ケアハウスの数はほぼ横ばいです」(田村さん)
それぞれの高齢者施設の違いを知って、親や自分にぴったりの「終のすみか」を見つけよう。
「女性自身」2021年5月4日号 掲載