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「’22年の4月からは、年金の受給開始年齢が75歳まで繰り下げられるようになります」

 

そう語るのはファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん。公的年金の受給開始時期は、現在は65歳を起点に、60歳までの繰り上げと、70歳までの繰り下げができる。

 

「年金繰り下げ受給の魅力はなんといっても年金が増えること。1カ月繰り下げるごとに年金額は0.7%ずつ増額されます。仮に65歳時点で年金を年間200万円もらえる人が70歳まで繰り下げると284万円、75歳まで繰り下げると368万円にまで増加するんです」

 

ただし、繰り下げ受給によって所得が増えると、税金や保険料などもアップするため、年金の増額分に比べ手取りの増加はやや少なくなる。

 

そもそも年金の受給開始時期は、夫と妻、厚生年金と基礎年金でそれぞれを別々に指定することができる。したがって、その時々の金銭や生活の状況によって一部だけを繰り下げることも可能だ。

 

「けれど、実際に繰り下げているのは全受給者の1%程度。早く死ぬかもしれないから、繰り下げ受給をしても元が取れるかわからないと考えている人が多いのです」

 

日本人女性の平均寿命は10年ごとに2歳ずつ延びて、現在87.45歳(’19年、厚生労働省)。仮に70歳まで繰り下げた場合に、受給期間が短くなることで減少する総受給額を、繰り下げによって増加した総受給額が上回るのは82歳前後といわれている。女性の場合、元を取れる確率は高そうだ。

 

「女性は男性よりも長生きする一方で、厚生年金加入期間が短く年金額が少ない人も多いです。夫には定年後も働いてもらい、夫亡き後の生活に備え、自分の年金だけでも繰り下げるのが賢い選択。年金は、生きている限りもらい続けられますから、繰り下げ受給は長生きへの備えになるのです」

 

個人年金や企業年金などの収入があったり、貯蓄がかなりたくさんある場合など、貯蓄を大きく取り崩さずにいられるなら、繰り下げ受給を検討しよう。貯蓄の取り崩しはできるだけ避け、最低でも70歳時点で1,000万円は確保しておきたい。

 

また、もし個人年金などの収入はあるがまとまった貯蓄がない、という場合は「一括受給」の選択肢も。65歳で受け取らなかった年金は「繰り下げ年数に応じて増えた金額で今後受給する」か「65歳からその年齢までにもらうはずだった年金を一括で受給する」かを選ぶことができる。65歳時点の年金額が200万円の場合、70歳で5年分を一括受給すると増額はないが1,000万円がもらえる。

 

「女性自身」2021年5月11日・18日合併号 掲載

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