■虎の子の退職金には絶対に手をつけないこと
収入が大きく減る、夫が定年退職を迎える60歳のとき。実はそこには魅力的な誘惑がある。それが退職金だ。収入が大幅に減る状況下で、目の前に現れた大金に、いかに手をつけないでいられるかが、大きな分かれ道となる。深田さんによれば、退職金で「やってはいけないこと」は、次の4つ!
【1】生活費として取り崩すのはNG
生活費の不足分を退職金から取り崩していると、長生きしたときにお金が足りなくなる事態になりかねない。
「まとまったお金が入ると気持ちが舞い上がってしまう人も多く、毎月の赤字の『このくらいならいいや』と、安心してしまいがちです。この時期は、年金生活を想定して、収入に見合った生活スタイルに変えるようにしましょう」
もちろん、家計を徹底して見直すことも重要だ。
「生命保険と通信費の“2大固定費”は徹底的に見直しを。子どもの独立後は、生命保険はほとんど必要ありませんし、通信費はスマホを格安SIMの契約に替えるだけで、かなり減額できます。コストカットの目標は年間50万円です」
それ以外にも、デパ地下のお総菜や食材といった“プチ贅沢”を少なくするなど、支出を見直すところはまだあるはず。
「この時期は、夫にゴルフに行く回数を減らしてほしいと考える妻も多いのですが、一方的なコストカットはケンカの原因になりますので、夫婦でよく話し合ってからカットする項目を決めましょう」
【2】住宅ローンで相殺はNG
住宅ローンは60歳までに返済しておくのが理想だが、最近は60歳以降にローンが残っている人も少なくない。残債が多い人が退職金で全額繰上げ返済すると、老後資金が不足することも。
「なるべく50代のうちに繰上げ返済をしておき、ローンの返済にあてる退職金は最小限にとどめましょう。ただし、あまり無理な返済はしないこと。年金生活に入るまでは働いてローンを返すという手もありますから」
あせって繰上げ返済をしすぎて、貯蓄がなくなってしまった、という状態もよくない。ローンの残高と貯蓄額を見て判断しよう。
【3】高額な買い物や旅行はNG
長年会社勤めしたご褒美に、夫が新車を購入する、といった話をよく耳にするが、こうした大盤振舞いは避けたいところ。
「病院やスーパーに行くのに車がないと不便という地域もありますので、車を所有するのはかまいませんが、買い換えるのなら、高級車ではなくコンパクトカーや軽自動車など安い車にしたほうが、ランニングコストも少なく済みます」
もちろん、妻も便乗して高級ブランド品を購入、なんてことにならないように自重しよう。
また、退職記念の旅行も要注意。今は新型コロナの影響で海外旅行は難しいが、国内旅行でも馬鹿にならない費用がかかることも。
「子どもや孫たちとの旅行で、宿泊費や交通費はもちろん、お土産代にいたるまでのすべてを親が支払った、などという話をよく聞きます。みんなで一緒に旅行に出かけるのは楽しいとは思いますが、無計画にお金を使ってしまうと、100万円、200万円といった単位のお金は短期間で意外とすぐになくなってしまいます。退職記念に旅行に行くのはかまいませんが、資金計画をしっかり立ててから行くようにしましょう」
【4】孫にお金をつぎ込むのはNG
最後に気をつけたいのが、“孫支出”。かわいい孫に「これほしい!」などとせがまれると、なかなかイヤとは言えないが、積もり積もれば目に見えて退職金が減っていくことに。
「お年玉ぐらいはあげてもいいとは思いますが、毎回会うたびに食事をおごったり、お小遣いをあげたりしていると、大きな出費になります。こうした出費はお正月やお盆など、家族が集まるときだけ、といったぐあいにルールを決めておくことも大事です」