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「8月には主要メーカーの食用油は、1キロあたり50円値上げしています。これは今年3回目の値上げで、合計110円も値段が上がったことになります。さらに9月には、大手2社がパスタを2.5~4.8%値上げ。ほかにも、長雨の影響を受けた野菜をはじめ、肉や魚などの生鮮食品も軒並み“値上がり”しています」

 

そう解説してくれたのは、経済評論家の加谷珪一さんだ。日ごろ立ち寄るスーパーの店頭でも“値上げ”を痛感している人も多いのではないか。

 

「一連の食品値上げの背景には、『世界的な原材料の価格高騰』、『天候不順による不作』、『漁獲量の減少』の3つがあります。これら要素のすべては地球温暖化による影響と考えられ、今後も食料品の“値上がり”傾向は、年単位で続くでしょう」(加谷さん)

 

食卓を預かるものにとっては、何とも絶望的な話……。だが、あらかじめ何が高くなるのかわかっていれば、事前に買いだめしたり、別の食品で代用することもできる。

 

それでは“何が、いつ、どれくらい”高くなるのだろうか、加谷さんと、生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんに聞いた。

 

■小麦、大豆は高騰。米価格は下がっている

 

「小麦粉や油脂類の価格高騰が食品価格に大きな影響を与えています。山崎製パンは10月1日出荷分から和洋菓子製品の平均7%の値上げを発表しました。さらに大手2社が植物油を原料とするマーガリンを同じタイミングで値上げします」(加谷さん)

 

8日、政府はさらに「10月からメーカーへの輸入小麦の売渡し価格を19%引き上げる」と発表した。

 

「この影響は大きい。来年1月ごろには、小麦粉価格の上昇が食パンの値段にも反映されるでしょう。上げ幅は、和洋菓子製品の値上げと同じ7%程度と予想されます。さらに、すでに値上げが行われたパスタも含め、うどんやそば、インスタントラーメンなどの麺類も、来年1月あたりに5~7%ほど値上がる懸念が」(加谷さん)

 

作るのに多くの小麦粉を使う天ぷらも、総菜店やスーパーの小売価格が値上げとなる可能性がある。

 

高騰しているのは大豆も同様だ。

 

「メーカー側が小売店に値上げ交渉中です。近いうちに、納豆や豆腐など大豆を原料とする食品が、10%ほど値上がる可能性が高いでしょう」(加谷さん)

 

さらに、遅れて来年3月ごろに5%程度の再値上げの可能性も。

 

一方、米の値段は下がっている。

 

「コロナ禍で外食産業での使用が激減したことなどもあり、米の価格は安くなっています。この機会に、チャーハンや和食の頻度を増やすのはありですね」(柏木さん)

 

8月に日本各地を襲った記録的な豪雨や長雨も、食品価格に大きな影響を与えている。

 

「一部の野菜やフルーツが不作になり、すでに価格が高騰。10月以降にもさらに10%程度の価格の上昇の可能性があります。さらに、コロナの巣ごもり需要で、保存がきくじゃがいもやさつまいもの価格も上昇しています。年末の買いだめ時期の12月には5%程度値段が上がっているかもしれません」(加谷さん)

 

高いからといって購入を躊躇した場合に、気になるのは栄養の偏りだ。柏木さんのアドバイス。

 

「野菜を減らしても、繊維質は摂取しましょう。安くて食物繊維が豊富なこんにゃくや、もやしなどがおすすめです」

 

地球環境の変動の影響は、漁獲量やアーモンドの生育にも影響を与えている。サンマとサケは記録的な不漁。世界シェアの半分以上を占める米国のアーモンドも不作だ。これらの値上げも避けられない。さらに、メインディッシュに欠かせない食肉の価格も。

 

「餌である穀類の値上げや中国での需要の急増などで、牛豚鶏を問わず、食肉は年間を通して値上げ傾向にあるでしょう。1月ごろに5%程度価格が上がっている可能性があります」(加谷さん)

 

一方、鶏肉はお得な買い方があるというのは柏木さんだ。

 

「大型スーパーなどでは、冷凍ブラジル産鶏肉が『2キログラム500円』などという特売も。最寄りのスーパーの価格を調べてみましょう」

 

【値上げ注意報! 食卓に欠かせない20品目】

 

〈和洋菓子製品(山崎製パン)〉値上げ時期:10月1日/値上げ割合:平均7%/値上げイメージ:菓子パン198円→212円。

 

〈コーヒー(味の素AGF、キーコーヒー)〉値上げ時期:10月1日/値上げ割合:20%程度/値上げイメージ:コーヒー粉(320g)420円→504円。

 

〈マーガリンなど(雪印メグミルク、明治)〉値上げ時期:10月1日/値上げ割合:1.9~12.8%/値上げイメージ:マーガリン(300g)290円→320円。

 

〈サケ・サンマ〉値上げ時期:10月/値上げ割合:10%/値上げイメージ:サケの切り身※1(100g)241円→265円。

 

〈きゅうり・なす〉値上げ時期:10月/値上げ割合:10%/値上げイメージ:きゅうり1本※1(100g)89円→98円。

 

〈梨・ぶどう〉値上げ時期:10月/値上げ割合:10%/値上げイメージ:巨峰(300g)800円→880円。

 

〈納豆・豆腐〉値上げ時期:10月、来年3月/値上げ割合:10%、5%/値上げイメージ:納豆3カップ(50g×3)75円→83円→87円。

 

〈じゃがいも・さつまいも〉値上げ時期:12月/値上げ割合:5%/値上げイメージ:じゃがいも1袋※1(500g)201円→211円。

 

〈アーモンド〉値上げ時期:12月/値上げ割合:5%/値上げイメージ:素焼きアーモンド(1kg)1,200円→1,260円。

 

〈食パン〉値上げ時期:来年1月/値上げ割合:7%/値上げイメージ:食パン1斤(350g)144円→154円。

 

〈麺類〉値上げ時期:来年1月/値上げ割合:5~7%/値上げイメージ:インスタントラーメン(1袋)110円→118円。

 

〈天ぷら〉値上げ時期:来年1月/値上げ割合:5%/値上げイメージ:エビ天(1尾)150円→158円。

 

〈牛肉・豚肉・鶏肉〉値上げ時期:継続的に値上げ/値上げ割合:↑/値上げイメージ:豚肉1パック※1(200g)520円→546円(来年1月)。

 

※価格はすべて税込み。※1は農林水産省の「食品価格動向調査」を参考にした。それ以外は店頭での流通価格を参考にした。

 

避けられない値上げの流れ。せめて値上げされるものを事前に知って対策を練ろう。

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