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三井住友カードは10月4日から国内初、プラスチックカード本体のない「カードレスクレジットカード」の発行を始めた。スマホなどで申し込めば最短5分でカード番号が発行され、その日からネット通販や店頭で使えるという。そんな、カードレスクレジットカードについて経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。

 

■便利さが魅力だが財布のひもは固く

 

カードレスクレジットカード発行の背景には、コロナ禍による買い物様式の変化があります。

 

店頭では接触を避けるため、現金での支払いが減り、クレジットカードやスマホ決済の利用が増えました。スマホ決済といっても、最終的な引き落としはクレジットカードで行うものも多いのですが、店頭でカード本体を差し出すことなく、スマホをかざしての決済が日常的になってきました。

 

また、ネット通販も広がりました。ネット通販ではカード番号とパスワードなどを入力するだけで、カード本体は要りません。今後は、こうしたカード本体を必要としない決済手段を選ぶ方が増えると予測され、カードレスという新たな選択肢ができたのです。

 

カードレスだと盗難の恐れがありません。加えてカード本体を作成しないので、プラスチックの削減、環境問題にも貢献できます。

 

そのうえ、カード会社としてはコスト削減が大きいでしょう。クレジットカードの作成や発送には1枚1,000円以上かかりますが、カードレスなら不要。その分を、三井住友カードはコンビニなどでの買い物に最大5%のポイント還元といったお得感に使って、ほかとの差別化を図っています。

 

カードレスクレジットカードは、LINEペイも同じく10月4日から提供を始めました。ANAカードやセゾンカードも導入を予定していますし、他社も追随するでしょう。

 

決済方法が増えると、何をどう使えばいいのか、迷う方も多いと思います。最新の決済方法に飛びつく必要はありませんが、キャッシュレスやカードレスの流れは止まらないと覚悟しましょう。

 

問題は金銭感覚です。現金だと感じられるお金の重みが薄らいで、お金を使いすぎてしまう人が増えないか心配です。特に50代の方。実は50代の単身世帯の41%、2人以上世帯の13.3%が、貯蓄ゼロの状態です(’20年・金融広報中央委員会)。家計管理が得意でない方は、キャッシュレス決済の多用は避けたほうがよいでしょう。

 

とりわけカードレスなどスマホをかざしての決済は、サインや暗証番号の入力が必要なクレジットカード決済より簡単で、記憶に残りづらいもの。使うたびにメモする、利用履歴をこまめにチェックするなど、予算管理を徹底することが大切です。

 

また、スマホ本体の管理に注意し、停電や充電切れに備えてある程度の現金も必要でしょう。

 

決済手段が多様になっても、自分のサイフは一つです。肝心の給料が上がらない現状では、サイフのひもはぎゅっと引き締めておくのが賢明でしょう。

経済ジャーナリスト

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