「ガソリンの価格がこのところ高騰し、7年ぶりの高水準です。それが、納豆、医薬品、電気料金など、思わぬ品々の値上げに結びつく恐れがあるのです」
こう話すのは世界の経済情勢に詳しい経済評論家の加谷珪一さん。
資源エネルギー庁が発表した10月第3週のレギュラーガソリン価格は、1リットルあたり164円6銭(小売価格)。これは7週連続の値上がりで、’14年10月以来およそ7年ぶりの高水準だったのだ。
なぜ、ガソリン価格は上がり続けているのかーー。
「コロナ禍でダメージを受けていた経済の回復傾向によって、世界的に原油の需要は増えています。しかし、世界各国は脱炭素化を急速に推進しているため、アメリカ、サウジアラビア、ロシアなどの産油国は、油田にこれ以上の投資をしない方針なんです」(加谷さん・以下同)
欧米を中心に進められている脱炭素化の動きによって、今後10年で、各国の石油消費量は約10%ほど減少する見通しだという。
そのため産油国側が、既存の油田から得られる利益を最大化させるため、原油価格を引き上げているのだと加谷さんは説く。
■原油価格の高騰は中長期的に続いていく
「こうした構造的な背景のため、現在の『原油価格高騰』はコロナ禍からの脱却時期にとどまらず、中長期的に続くものと思われます。ガソリン価格は基本的に原油価格に連動しますから、今後も上がり続けるでしょう」
では、どうして農作物や電気までもが、ガソリン価格の影響を受けるのだろうか?
「石油のさまざまな使途の内訳は、約4割が『動力』、つまりガソリン、灯油、軽・重油。また約4割は『発電・暖房』用に、そして残り約2割が『工業製品』の素材として使われており、石油の使途にかかる商品は多岐、全方位にわたっているのです」
そのため「こんなモノも!?」と驚くような品物まで、ガソリン高騰のあおりを受けて値上げが予測されることになっているそう。
さっそく加谷さんに「ガソリン高騰で予測される値上げ品目」を教えてもらった。
■ガソリン高騰で予測される値上げ品目
【食品】
〈納豆〉:パック、たれの袋に石油が使用されている。大豆を輸入する燃料費の高騰も影響。輸入キムチも同様。
〈トマト〉:ビニールハウスでの栽培にかかる暖房費用(燃料の石油)が高騰しているため値上がりの可能性が。
〈カズノコ〉:カズノコは主に、アメリカやヨーロッパから輸入しており、輸送の燃料代が高騰しているため。
〈キャベツ〉:農薬や肥料にも石油由来のものがあり、それらの価格が高騰しているため値上がりが予想される。
〈イカ〉:近海の船で捕るイカ、遠洋漁業のマグロなどは、船の燃料代が高騰しているため値上げの可能性が。
〈アイス〉:成分に「香料」が使用されているものには、石油由来のものが含まれている商品があるため。
【交通】
〈タクシー〉:燃料費だけで考えても、今後、半年から1年以内に政府が認可すれば約5%ほど値上げも考えられる。
〈航空機〉:運賃に、「燃料サーチャージ料金」が付加されているため、燃料である石油の高騰が料金に直結する。