■もめない相続のカギは相続人同士の“納得感”
しかし、いくら「遺言書」で財産の分け方を指定しても、ほかの相続人から遺産の最低限の取り分である「遺留分」を請求されると、渡さなければならないといった決まりもある。
たとえば、母と同居する長男が、「弟と妹は介護をほとんど手伝わないのだから、相続財産は分けなくてもいいだろう」と考えたとしよう。長男の気持ちを察した母は、「長男だけに相続財産を渡す」という「遺言書」を書こうとしたが、弟と妹から「遺留分」を請求されたら、法定相続額の2分の1を渡さなければならず“争続”のもとになる。
もし遺産が3,000万円であれば、3人のきょうだいで分ける場合の法定相続額は1人1,000万円で、遺留分はその2分の1の500万円という計算になる。遺言書を書くときには、こうした遺留分に配慮し、相続人同士が納得できる内容にしておくことが望ましい。
また、遺言書に不備があると無効になることも。遺言書を作成した「日付」の時点で親の認知機能に問題があったり、体調不良で正確な判断ができていないということが後でわかったりすると、無効になることがあるので注意したい。
「遺言能力といって、遺言の内容を十分理解したうえで自分の死後にどのようなことが起こるのかを想定できる能力が問題になります。遺言能力がない人が遺言を書いたとして、ほかの相続人がその内容に納得いかないと家庭裁判所に申し立てられると、無効になる可能性があります」