スマホやゲーム機の高価買取を装って、高利でお金を貸す「先払い買取現金化」が横行しています。その実態を、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれましたーー。
■手を替え品を替え登場する高利貸し
「先払い買取現金化」の仕組みは、利用者が売る商品としてゲーム機などを撮影し業者に送ると、その画像だけで査定。早い業者だと15分以内に買取代金が振り込まれます。いつでもすぐにお金が手に入る場合が多いです。
一見、新しい中古品買取のようですが、「先払い買取現金化」は「お金が今すぐ必要」な方が現金を得るために利用します。契約上は買取商品を7日間以内に送るのですが、利用者は受け取った現金で急場をしのぎ、買取商品を送ることなく契約をキャンセルして、7日後に返金します。
業者もキャンセルが前提の商売で、キャンセル料を40%などと設定しています。買取代金が3万円なら、キャンセル料は1万2000円ですから、合わせて4万2000円を返さねばなりません。
問題は、7日間という短期間で40%という高利率です。
通常、利息は年間何%かで表します。このケースを年間利息に換算すると、7日で40%ですから1カ月なら約4倍で160%、1年だとさらに12倍で1920%。年間2000%近くになり、尋常ではない高利率だとわかります。
金融庁は、キャンセル料が借金の利息とみなされないか、また「先払い買取現金化」は闇金融の新しい手口ではないかと考え、利用を控えるよう注意喚起を行っています。とはいえネット検索すれば簡単にいくつもの業者が見つかり、取り締まりは追いついていません。
現在、貸金業には「利息制限法」があり、借金が10万円未満と少額でも年利は20%までと決まっています。ただそれではもうけが少ないので、闇金融はこれまでもさまざまな手口を編み出してきました。
’20年に暗躍したのは「給与ファクタリング」。たとえば利用者が、20万円の給料を受け取る債権を業者に譲渡し、その場で16万円を受け取ります。その後給料日に受け取る20万円は、債権を持つ業者のもの。利用者は給料日より早く現金を手にする代わり、手数料として差額の4万円を取られます。
この手数料が貸金業の利息に当たる高利貸しと認められ、取り締まりが厳しくなると下火になりましたが、「先払い買取現金化」のように姿を変え再登場するのです。
闇金融に引っかからないためには、「今すぐお金が必要」という切迫した事態を招かないことです。「今月ちょっと厳しいから」とクレジットカードでお金を借りる「キャッシング」に手を出し、返済のためにキャッシングを重ねた末に多重債務に陥るなど「1回だけ」の軽い気持ちから取り返しのつかない事態に発展することも。
キャッシングも「先払い買取現金化」も、借金ではない雰囲気をまとっていますが、借金は借金、怖いものです。君子危うきに近寄らず。肝に銘じておきましょう。
【PROFILE】
荻原博子
身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある