関東甲信地方では6月27日、統計開始以降最も早い梅雨明けとなり、その後は連日、全国各地で猛暑日を記録している。そんななか総務省消防庁が発表した最新の「全国の熱中症による救急搬送状況」は、かつてない数値を示した。6月20〜26日における救急搬送者が、全国総数で4千551人にものぼったのだ。
「これは6月の統計を取り始めた’10年以降、最多の数字。さらに驚くべきことは、前年同時期比での救急搬送人数の増え方です。東京都では昨年41人だったのに、今年は458人と11倍以上にのぼったのです」(全国紙記者)
いかに連日の猛暑が厳しいのかが一目瞭然の数値だが、もう一つ見落とせないのが、熱中症の“発生場所”の統計だ。消防庁発表の「熱中症発生場所」の構成比では、「住居」で熱中症になった人が1千698人、全体の37.3%と、「道路」「屋外」を抑えて最も多い。
また、東京都監察医務院発表の「’20年夏期の熱中症死亡者(屋内死亡者)のエアコン使用状況」では、「エアコンを使用していなかった」または「エアコンを設置していなかった」人が約9割を占めた。つまり、熱中症は「部屋の中」で最も多く発生し、その部屋の中での熱中症による死亡者の約9割が、「エアコンを使っていなかった」と言えるのだ。
「部屋にいるときにエアコンをつけている」ことは、命を守る行動である、と言ってもけっして過言ではないだろう。
では、現在エアコンを設置していない部屋がある人や、エアコンの調子がよくない、という人は「すぐに買える」状況なのだろうか?家電量販店大手「ヤマダデンキ」を展開するヤマダホールディングス経営企画室・清村浩一室長に、エアコンの在庫状況について話を聞いた。
「現状、ヤマダでは、ごく一部の在庫なしを除いて品切れや入荷の遅れは発生しておりません。多様なメーカー様から潤沢に商品を仕入れておりますので、いま現在は安心してお買い求めいただけます」
5月下旬には一部で「エアコン入荷待ち」の報道もあったが、最新の本誌取材では6月下旬の段階で、多くの店舗で購入可能の状態だった。だが前出の清村室長は、次のようにエアコン使用上の注意を促す。
「必ず試運転し、動作確認・点検のうえで使用してください。ここ数日の猛暑で急に電源を入れた方も多いと思いますが、いままで使っていない状態で、いきなりフル稼働させると故障につながる恐れがあります」
よもやの故障時に「買い換えればいいだろうと安心し切っていては危険」と話すのは、流通事情に詳しい経済評論家の加谷珪一さん。
「昨今では、家電量販店は常に店頭に大量の在庫を備えていますので、エアコン本体を購入することはできるでしょう。しかし、エアコンは設置工事がマスト。例年、『配送・設置』作業が立て込むと、本体購入日から設置工事まで『2週間待ち』などの事態を招いてしまいます」
加谷さんによれば、例年エアコン設置工事が殺到する時期は梅雨明け(関東甲信の場合は平年で7月19日)前後となることが多いが、今年はすでに関東甲信で梅雨が明けている。
「それに加えて熱中症警戒アラートが出されたり、急な使用による故障などが相次いで発生すれば、週末の購入希望者は激増し、本体が品薄になることも懸念されます。たとえ購入はできても『設置工事待ち』が発生するリスクが考えられます」
この週末(7月10日)といえば、参議院選挙の投開票日。そのタイミングで「設置工事待ち」の状況が出始める恐れがあるというのだ。
「設置工事は例年は長くても『2週間待ち』程度ですが、今年は新型コロナウイルスの影響による物流網の混乱なども加味すれば、『3週間〜1カ月待ち』という事態も生じるかもしれません」
では、いざ故障という事態にはどう対処すればいいのだろうか?
「とにかくエアコンは“なるべく早く買う”に尽きます。世界的な半導体不足の影響が長引き、今後も、値上げされることはあっても、値下がりは一向に期待できません。また、エアコン本体を購入する場合は、設置工事日まで決めて初めて契約成立と考えてください。設置当日は工事に立ち会うため、家族の誰かが休暇を取ったり、出社時間を遅らせるなど、確実に最短納期で設置できるようにすべきです」
家族の命を守るため、エアコンの買い換えは早めの行動を!