睡眠時間は長さだけでなく熟睡できているかが重要(写真:アフロ) 画像を見る

季節の変わり目に夏の疲れがドッと出て、なかなか寝付けないという人も多い。

 

「睡眠不足や睡眠障害は、不調やさまざまな病気のもと。よい睡眠を取るためには時間の確保はもちろん大切ですが、たくさん寝ればいいというものでもありません。睡眠の質を高めることがとても重要なのです」

 

そう語るのは、米スタンフォード大学医学部精神科教授の西野精治先生。西野先生は睡眠・覚醒のメカニズムを研究している。西野先生が提唱しているのは“睡眠負債”という考え方。慢性的な睡眠不足の状態が続き、その負債が蓄積して、心身ともに支障をきたしている状態のことを指す。

 

一般的に適切な睡眠時間といえば、個人差もあるが7時間前後とされている。たとえば、いつもの睡眠時間が7時間という人が5時間しか熟睡できていない日が1週間続いたとすると、14時間の睡眠負債を抱えることになる。

 

「睡眠負債が蓄積すると、免疫力が低下し、感染症のリスクが高まります。新型コロナウイルスを含め、感染症と睡眠には深い関係があり、睡眠が十分でないとワクチンを打っても抗体ができにくい、感染した場合に回復が遅くなり重症化しやすくなる、といったことが指摘されています」(西野先生・以下同)

 

睡眠時に空気の通り道である上気道が狭くなることで酸欠状態になり、睡眠が分断されてしまう「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の人は、新型コロナに感染しやすいという海外の研究もある。’20年9月に米ノースウェスタン大学のマシュー・B・マース教授らが発表したデータによると、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の人は医療機関で治療を受けている同世代の人と比べて、新型コロナに罹患するリスクが8倍、呼吸不全を発症するリスクは2倍高くなることが判明した。

 

また、’21年4月に西野先生が最高研究顧問を務めるブレインスリープ社が1万人を対象にオンライン調査をしたところ、新型コロナに感染した144人のうち、35.4%は「睡眠時無呼吸症候群」でもあることがわかった。

 

「感染しなかった人たちの無呼吸の有病率は2.7%。コロナに感染した人との間にはなんと13.1倍もの開きがありました」

 

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