シャンシャンは中国でも有望株。誰もが赤ちゃんを望んでいる 画像を見る

リーリーとシンシンの第1子として誕生したシャンシャン。“まな娘”の返還に、前上野動物園園長・土居さんの胸中も複雑だ。シャンシャンは中国でどんな生活を送るのか、気になることをすべて聞いてみた。

 

’23年2月21日に返還が決まってしまったシャンシャン。土居さんは背筋を伸ばして見送ってあげる心づもりだ。

 

「研究者が個人的にしている話も含めて、いろんな人の話を聞いてると、みんなシャンシャンはよい個体だと。中国が返してくれと言っているのは、交配するためですから、赤ちゃんを期待しているわけです。中国が血統図を公開していないから推測の域を出ませんが、私が園長のときも中国サイドがシャンシャンはよい個体だと言っていました」

 

それならば、シャンシャンは中国でも人気があるのだろうか。

 

「それはわからないですね。ただ、比べるのはよくないのですが、皆さんが言うように、ほかのパンダよりかわいいとかはあるんじゃないでしょうか」

 

中国国内でもシャンシャンのように行列ができたり、爆発的人気を誇るパンダはいるのだろうか。

 

「それはあまりいないと思いますね。パンダ保護協会にはひと目で見分けて『これは〇〇』と名前で呼ぶ会員はいますけれど、これは極めてまれ。ファンの中でも個体識別できるようなコアな方はごく少数。そこまで認識できる人ってそんなにいないでしょう。中国国内ならパンダはいろんなところで見られますしね」

 

やはり日本のパンダファンたちは世界的に見ても熱量が高いといえるのだろう。

 

【さよならシャンシャン】中国返還後の生活は?夫はイケメンに?気になるすべてを前上野動物園園長に聞いた
画像を見る シャンシャンが暮らす予定の『臥龍中国パンダ保護研究センター』は動植物生態学など専門的人材を有する世界有数の研究機関だ。

 

日本人飼育員・阿部展子さんがいる四川省の『成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地』には、’22年末の時点で222頭のパンダが在籍。彼女にシャンシャンの担当になってほしいと願うパンダファンの声も大きい。

 

「四川省には成都だけでなく臥龍・雅安・都江堰にもパンダがいますよね。海外にも貸し出ししている。頭数はかなり多いんです。でも阿部さんがシャンシャンの担当になることはありえませんね。彼女は成都の基地の管轄で働いていますが、一方、シャンシャンが行くのは国の管轄である『中国パンダ保護研究センター(臥龍核桃坪熊猫基地)』のほう。管轄している組織が違うから。日本人だからってわざわざ引っ張ってくることはないですよ」

 

上野動物園では、シャンシャンが嫌いなにんじんを小さく切ったりすったりと工夫してあげている。シャンシャンファンが心配してるのは、そういう細かいことを中国でやってもらえるのかということ。

 

「別ににんじんは食べなくてもいいんですよね。竹が主食でしょ。訓練のために昔からにんじんなどほかのものも混ぜて与えるようにしているだけで、それはなるべく野生に近い形にしているから。でも、そもそもパンダはそんなににんじんは食べないですよ。りんごはよく食べているイメージがありますが、甘いものに対しては嗜好性があるみたいで、好んで食べるようになったようですね」

 

【さよならシャンシャン】中国返還後の生活は?夫はイケメンに?気になるすべてを前上野動物園園長に聞いた
画像を見る 雅安パンダ基地』では生活空間も広々。縄張り意識の強いパンダの習性を鑑みて、1頭ずつ完全個室状態でおひとりさまを満喫できる環境が整っている。

 

シャンシャンのペアリング法は彼女が発情したら遺伝的によいパンダが何頭か並べられ、シャンシャン自身が選んでいくと伺いました。

 

「中国は基本的にそういうやり方ですよ。日本と違って相手が1頭しかいないわけではないですから。簡単に言うと、いくつかの部屋が広場に面してあって、その各部屋にオスが入っている。その広場の中央のスペースにメスを連れてきて、周囲のオスを品定めする。気に入ったオスがいれば近寄っていきます。鳴き交わすとかして自分の好みのオスのところに行くわけです。そういうやり方で選ばせます。野生でも基本的にはメスが選びますから。ケンカして勝ったオス、つまりいちばん強そうなオスに引かれるわけだから。多くの場合は争いで優先順位が決まっていく。そういうやり方を中国は取っていると思います」

 

しかし、これはあくまで自然交配のケース。これ以外にも交配法はある、と土居さんは語る。

 

「中国の場合、遺伝の多様性を図るようにと努めていますから、このオスの子どもを作りたいと思ったときには、1対1でお見合いしてもらうってこともあるとは思います」

 

シャンシャンが選ぶのは、いわゆる“イケメンパンダ”なのだろうか。

 

「相性があるでしょうからね。中国サイドも出身地などを見て、今後の多様性を確保できる、遺伝的になるべく支障が出ないような候補を何頭か入れるというやり方をするはずです。シンシンとリーリーのときには、この中から選んでくださいって数頭の候補が中国サイドから提示されたといいます。どれを選んでもある程度問題ないような組み合わせを取っていたと思います」

 

血統図こそ示されなかったが、シンシンもリーリーも優秀な個体だそうだ。

 

「シンシンかリーリーかどっちか忘れちゃったけど、おじいさんかおばあさんの代で野生由来と言われていた記憶がありますね。どちらも遺伝的によい個体だそうですよ。あくまで口頭でのことでしたけどね」

 

シャンシャンが子供を産んで愛情たっぷりな子育てをする様子を見られる日も近いかもしれない。

 

【INFORMATION】

 

【さよならシャンシャン】中国返還後の生活は?夫はイケメンに?気になるすべてを前上野動物園園長に聞いた
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『パンダ自身 5頭め シャンシャン自身』
価格:1,300円(税込)
出版社:光文社
発売日:2023年2月21日(火)
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