金融庁は’23年春から、少額短期保険の監督を強化する方針です。少額短期保険とは、受け取れる保険金が病気死亡なら300万円、損害保険は1000万円までなどと一般の保険に比べ「少額」で、保険期間が1~2年と「短期」な保険。「ミニ保険」とも呼ばれ、ペットの医療費や自転車事故、スマホの故障、急な旅行のキャンセルなど、一般の保険ではカバーできないニッチなリスクに備えるものです。
ミニ保険の誕生は’05年成立の改正保険業法にさかのぼります。それまでは一般の生命保険や損害保険、JA共済など監督官庁が認可した認可共済と、根拠となる法律のない無認可共済が混在していました。なかでも無認可共済は掛金が安く人気があったものの、共済金が適切に支払われないケースが問題になっていたのです。
そこで保険業法を改正し、無認可共済は二者択一を迫られます。1つは、金融庁の審査を経て免許を受ける一般の保険会社になるか、もう1つは財務局に届けを出して少額短期保険会社になるかです。
ただ一般の保険会社になるには大きな資金が必要。ペット保険を扱うアニコム損害保険は保険会社になる道を選びましたが、無認可共済のほとんどは少額短期保険会社になりました。現在、少額短期保険会社は115社。保険料の安さ、スマホで加入できる手軽さなどが評判で、’21年度の契約件数は1千54万件、保険料収入は1千277億円。’09年度と比べると、契約件数は2.7倍、保険料収入は3.1倍と右肩上がりです(’22年、少額短期保険協会)。
■保険金が下りる条件を細かく確認しよう
しかし、最近は保険金の支払いが滞るなどのトラブルが増加。たとえばジャストインケースの「コロナ助け合い保険」は感染者の急増で’22年3月に新規販売を停止、保険金も大幅減額したことなどで業務改善命令を受けました。また、ペット保険を扱うペッツベスト少額短期保険は収支が悪化し保険金の支払いが遅れ、’22年6月に業務停止命令を受けました。
そもそもミニ保険は、一般の生命保険や損害保険よりも、保険契約者を守る仕組みが脆弱です。一般の保険は長期、高額な保障が必要なので責任準備金も大きく、収支が悪化しても保険金が出ない事態に陥ることのない仕組みになっています。たとえ保険会社が破綻しても、保険金は「保険契約者保護機構」によって保護されます。少額短期保険は保険契約者保護機構の対象外。そういう意味ではバックアップが脆弱なところもなかにはあると理解しておきましょう。そのうえで、加入の際には保険金が下りる条件などをきちんと把握すること。たとえばペット保険では補償対象となる病気が細かく決まっているので、よく確認を。
ユニークなミニ保険のよさを残しつつ、金融庁がトラブルを起こす会社をどう取り締まるのか、注目したいと思います。