「スキマ時間にできる簡単な仕事」をうたう副業詐欺が増えています。仕事内容は「動画を見るだけ」「“いいね”を押すだけ」などと広告し、空き時間を活用して少しでも稼ぎたいと思う人をターゲットにしています。
国民生活センターに寄せられた簡単な副業に関する相談は2023年度が3千694件。2020年度から3年間で2.8倍です。さらに2024年度は4~7月で950件。前年同期より1.35倍に増加しています。
副業トラブルのきっかけは、2024年度の相談者の約7割がSNS上の広告です。
被害者のひとり、30代のAさんもSNS広告にひかれたといいます。広告をポチッと押すと副業サイトに移り、そこでLINEなどメッセージアプリの「友だち登録」を行いました。その後は、使い慣れたメッセージアプリで、仕事内容の説明や仕事の依頼を受けたそうです。
最初は1件100円~の仕事を受け、数百円の報酬を受け取ります。何回か繰り返すと「報酬がきちんと払われる」と安心したでしょう。
そのうち「高額報酬の案件」を持ち掛けられます。不信感を手放しつつあるなかで「高額報酬を受け取るために、事前に1万円の送金が必要」と言われ、Aさんは1万円を送金。送金した1万円に報酬を加えた振り込みを受けます。Aさんはすっかり信用したでしょう。
徐々に報酬も上がっていくなか、Aさんの仕事にミスがあったと処理費用15万円を要求されます。Aさんはこれを払いましたが、その後はさまざまな理由をつけ40万円、70万円と要求され、詐欺ではないかと気づきました。
■先払いを要求されたら周囲や「188」に相談を
冷静に考えると「高額報酬のために1万円の事前送金」から怪しいです。しかし、少額のやりとりで時間をかけ信頼関係を構築してからの詐欺なので、渦中にいると気づきにくいものかもしれません。
そこで、副業詐欺に遭わないために、どんな仕事でも「事前にお金を払え」と言われたら疑うことをルールにしましょう。先の副業詐欺以外にも、働くためには専用キットが必要だからとキットを購入させられる。会員組織への加入が必須だからと登録料を徴収される。仕事に必要な専用ソフトのインストール費用なども、本来は雇う側が払って支給すべきものでしょう。
これらすべてが詐欺とは限りませんが、先払いを要求されたらいったん立ち止まって、家族や友人に相談。または消費者ホットラインに電話し相談しましょう。
実は、先払いが必要と言われ請求される金額も、年々上がっています。2024年度の平均は約106万円。先のAさんも、最初の1万円からずるずると払い続けたため、「生活費をすべて振り込んでしまった」と嘆いています。
物価高騰が続き、生活は厳しくなる一方で、収入が欲しい気持ちはわかります。でも“うまい話”はありません。「高額」という言葉も、詐欺を疑うキーワードとして心に刻んでおきましょう。