認知症になると親の口座は凍結…元気なうちにやっておきたい「代理人指名」とは
画像を見る 子どもが親の金融資産を守るにはどうすれば…(写真:KY/PIXTA)

 

■制度利用の前に親の資産把握しておくこと

 

そして、よく似た手続きは保険会社にもあるという。

 

「『指定代理請求制度』です。保険の契約時や契約途中でも、指定代理請求人を設定できます」

 

保障の対象となる被保険者に特別な事情、たとえば病気などにより保険金等を請求する意思表示ができない場合、指定代理請求人が保険金や給付金の請求を行える。治療上の都合で、親ががんなどの病名や余命の告知を受けていないにも、がん治療に関わる入院給付金や手術給付金、リビング・ニーズ特約保険金などを請求できるのだ。

 

「指定代理請求人は保険金等の請求はできますが、保険の解約はできません」

 

また証券会社は、冒頭で紹介した家族サポート証券口座を準備している。

 

「現在でも『予約型代理人』を指定する制度がありますが、投資商品の売却はできても買付けはできません。しかし、親の資産をうまく運用するには、投資商品の買付けまでできる手段が必要だろうと、家族サポート証券口座が制度設計されたようです」

 

実際に利用できるのは、8月ごろの見込みだという。

 

「家族サポート証券口座はあらかじめ代理人を決め、公正証書で委任契約を結ぶ必要があります」

 

金融機関にはそれぞれ代理人の制度があるが、利用の前に親の資産を把握しておくことが大前提だ。とはいえ、たとえ親子でもお金の話を切り出すのはむずかしい。

 

「親のお金事情を聞き出すのではなく、親が困っていることを手伝うというスタンスが重要です」

 

山中さんは「最近、私の保険を整理したら、思った以上に大変だったわ。お母さんは大丈夫? 整理できてる?」などと聞いたそう。

 

「高齢者には役所からの書類がたくさん届くものです。『ちゃんと手続きできてる? 手伝おうか』といった声かけもいいでしょう。

 

親はきっと多くの書類にうんざりしているでしょう。手伝おうかと声をかけると、喜ぶ親御さんが多いと思います」

 

まずは保険の証券などを整理して、リストを作るのがおすすめだ。

 

「どこの保険会社に、だれが(被保険者)何の目的で(保障内容)いくら(保険金等の金額)受け取れるかをリスト化しましょう(表参照)。その際、証券番号とコールセンターの電話番号を忘れずに。保険金などはコールセンターへの電話で請求できます」

 

保険の整理が進んでくると、親は安心するのだろう。銀行通帳なども見せてくれるようになる。

 

「銀行預金については、銀行名、支店名、口座番号と現時点の残高をメモしてください。光熱費やクレジットカードの引き落とし口座や年金が振り込まれる口座も確認を。複数の年金がある人は口座が分かれていることもあります」

 

親が投資などの資産運用を行っているなら、どの証券会社か、株か投資信託かといった投資の種類、投資金額などを控えておくとよい。

 

「高齢者でもネット証券を利用する人がいます。必ずIDとパスワードを聞いてください。利用していることを知らなければ、親の財産を取りこぼすことにも」

 

きょうだいにはどう伝えればいいのだろう。

 

「事前に『親の預金などを整理する』とひとこと伝えておくのがポイントです。その後、作ったリストを見せ、通帳などの保管場所を知らせておくといいでしょう」

 

このとき、利用頻度の低い銀行口座などは解約して口座数を減らすことも大切だ。

 

また高齢者は手術に耐えるほどの体力がない人も多い。本当に必要な保険を選んで、不要な保険の解約を検討しよう。

 

「資産を整理しシンプルにすることで、管理が楽になります。代理人の指名手続きも整理してからでないと大変ですよ」

 

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