親が亡くなった直後に、「祭壇はどれにしますか? 花好きの故人には花祭壇が喜ばれますよ」などと持ち掛けられたら、どうするだろう。葬儀の相談は、骨壺は、棺は、遺影は……と細部にわたって決断がつきまとう。身内の死に直面し、心身ともに疲れた状態で冷静な判断など無理なのでは。
「“少しだけいいもの”を選んだら費用が思ったよりかさんだけど、もう一度やり直す気力がなくてそのまま契約する人もいます」
これは、どんなに善良な葬儀社でも起こりうることだ。
「どんな葬儀にしたいのか。その費用はどれくらいが妥当かは、その場に直面してからでは難しい。事前にしっかり考えておくべき」
しかし、高齢とはいえ元気な親に「葬儀の見積もりをとりたい」とは言い出しづらいが……。
「まずは、自分の葬儀を見積もってみましょう。今はネットで一括見積もりができますよ」
だれでも明日死ぬかもしれない。中高年ならなおさら、自分の葬儀代を知っておくといいだろう。
「葬儀を考えるのは、自分の人生のゴールを見つめること。日々の暮らしを振り返るきっかけにもなりますから、おすすめです」
50代後半の記者がネットで一括見積もりを行ってみると、3社から回答がきた。なかには「一式○○万円」だけで各項目の単価がわからないところや、斎場の使用料やメーク・納棺の費用などの最低単価が示されているところもある。見積書に並ぶ項目を比べるだけでも、各社の違いは明らかだ。
「項目が細かく分かれ、具体的な金額がわかるところがいいと思います。そのうえで、見積書の不明点や『参列者が思った以上に増えたらどうなる?』といった質問をぶつけてみると、葬儀社の本質が見えます。真摯に柔軟に対応してくれそうな葬儀社を選びましょう」
その後、親に「終活ブームだから、自分の葬儀の見積もりを取ってみた」と見せてから、「お母さんの分も取ってみる?」と勧めるとスムーズだという。
ただ家族葬に固執するのは考えものだと勝さんは言う。
「家族葬で親を送った後、親の友人が『手を合わせたい』と次々に訪れて、かえってめんどうだったという話はよく聞きます」
菩提寺があるなら寺の部屋を借りて通夜葬儀を行う手もあるそう。
「会場費をとらない寺が多いので、御布施を少しはずんでも、葬儀社の斎場を借りるより安上がりです」
人はみんないつか死ぬ。元気なうちから死をもっと身近なものとして話し合っておくことが大切だ。
画像ページ >【グラフあり】葬儀トラブルの相談が増えている(他5枚)
