■オンライン開催で参加者の負担も軽減
『鉄拳』を導入する以前、大会は三重県津市の榊原温泉にある施設で開催されていた。しかし、参加者を会場まで連れていくことは、施設職員にとっても大きな負担だったという。
完全オンライン化してからは、各施設から気軽に参加できるようになり、参加者も増えていった。
次の冬で14回目を迎えるケアeスポーツ大会。毎回、あみーご倶楽部を中心に、名古屋市内の介護施設からも参加者を募り、各施設から選ばれた約10人が腕を競う。優勝者には、名前が刻まれたクリスタルトロフィーが贈られるという。
「負けた方は、本当に悔しそうにされます。一方、勝った方はとても喜ばれて、トロフィーを自分の部屋や施設の入り口に飾る方もいます。なかには、涙を流して喜ぶ方もいらっしゃいます」
そこで、実際にケアeスポーツ大会に参加した3人に、感想を聞いた。
■「やるからには負けたくない」89歳が得た新たな目標
大澤春子さん(89)は、かつて華道と茶道を教えていたという、上品なたたずまいの女性だ。施設ではトランプやオセロを楽しみたいと思っていたものの、なかなか同じレベルで対戦できる相手が見つからず、退屈を感じていたという。
「格闘技なんて、90年近く生きていますが、やったことがありません。人をぶったこともありませんから、ゲームの中で初めて人を打ちました。
何が何だかわからないまま、画面を見ながら手をバタバタと動かしていたら、1勝できたんです。2回戦では、いつも優勝しているという強い方に当たって、負けてしまいました。
もっと勉強して、次はいちばん強い人に挑戦したいという目標ができました。やっぱり、やるからには負けたくないです」
大会に挑戦する際には、ひ孫から「頑張れ!」と応援されたという大澤さん。いつか、ひ孫とも『鉄拳』で対戦したいと意気込んでいる。
■「“アリサ”になりきってキック!」85歳の夢は優勝
渡部絹子さん(85)は、現役時代にマンションの管理人を務めていたしっかり者。施設でも利用者同士をつなぎ、会話を楽しむ社交的な女性だ。
趣味はピアノで、ケアeスポーツ大会への参加はこれまでに3回。『鉄拳』では、見た目のかわいらしさから「アリサ」というキャラクターを選んでいる。
「2回戦までは進んでいるんですけど、なかなか決勝には行けません。対戦中はアリサになりきって、ひょいひょいとキックやパンチをしたり、飛んだりしました。夢は優勝です」
大会が近づくと、渡部さんは積極的に練習に励む。当日は、仲のよい利用者たちが後ろに集まり、「頑張れ!」と声援を送ってくれるという。その応援も、大きな励みになっているそうだ。
