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前評判を覆してW杯ロシア大会の決勝トーナメントに進出した日本代表。今回、日本代表の快進撃を支えた医療スタッフのなかに、1人の女性ドクターの姿があった。日本スポーツ振興センターが管理・運営する国立スポーツ科学センター所属スポーツドクター土肥美智子さん(52)だ。

 

なでしこジャパンが準優勝した’15年のW杯ではスタッフとしてドーピング対応も務めるなど経験豊富で、田嶋幸三JFA会長(60)の妻でもある2児の母だ。

 

ロシアでは、選手の体調管理やコンディショニング面をケアし、ケガからの回復をサポートした土肥さん。帰国後に選手とともに闘った“熱い1カ月半”を振り返ってもらった――。

 

土肥さんや整形外科医が、個々の選手のケアをするのは、朝晩の1日2回。

 

「故障している選手は『本番に間に合わない』という不安や、焦る気持ちは当然ある。そういう気持ちをやわらげながら、故障していない部分の状態を維持しつつ、自転車やジョギングなどのトレーニングやリハビリをしていきます。そのなかで根気のいる治療や、かなり苦痛を伴うマッサージもあるんです。日々の心拍数から疲労感をはかり、データと照らし合わせながら、『どこまで追い込んでいいのか』をスタッフを交えて判断します。数値だけに踊らされないように、冷静に状況を考えていました」(土肥さん・以下同)

 

そんななか、土肥さんのきめ細かなケアで、ケガが回復していく選手たち。

 

「ある選手は毎日、治療を受けて、つらいマッサージにも耐えてリハビリを頑張っていました。離脱せずに頑張った。開幕が差し迫った日のこと、私が『明日から練習に合流できるね、ほんと、よく頑張ったね!』と言ったら、彼は『なんだかお母さんみたいなことを言うね』って(笑)。私も『まあ、年の差を考えると、気持ちはお母さんみたいなもんでしょ』と答えました」

 

それを機に彼は、土肥さんのことを「お母さん」と呼ぶようになったという。それに釣られたのか、ほかの何人かの選手も「お母さん」と呼び始めるように。親しみを込めて「みっちゃん」と呼ぶ選手もいたそうだ。

 

選手が本音をさらけ出せる空気を、土肥さんは作り出し、さらに“お母さん”として、チームを支えた。土肥さんの治療やケアで心身ともに回復していった乾貴士(30)や香川真司(29)らは、試合で大活躍をみせた。

 

そうするうちに、全23選手の一体感がより強くなっていったのだという。

 

「試合が終わると、選手たちは疲弊しきっていましたが、試合に出なかった選手も不満をおくびにも出さないし、和を壊すようなことがなかった。出場した選手も、出ていない選手が孤立しないようにお互いで支え合っていた。『あれ、今日は誰が出ていたんだっけ!?』と試合後にわからなくなるくらい、素晴らしい雰囲気ができていました」

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