羽生結弦 靭帯損傷でGPファイナル絶望も再現期待される“4年前の奇跡”
画像を見る 宇野と抱きつく羽生(写真:AFP/アフロ)

 

■平昌五輪のときと状況が酷似

 

NHK杯はグランプリ(GP)シリーズの一戦。羽生は11月26日から開催されるGPシリーズ・ロシア杯にもエントリーをしているが、NHK杯の欠場でGPシリーズ成績上位者で争われるGPファイナルへの出場は絶望的に。

 

「ケガの程度がどの程度のものなのか、全治何週間なのかも明らかにしていないのが気になるところです。ケガの程度がそれほどでもなく、ロシア杯から復帰するということも考えられます。一方でロシア杯での復帰が無理ということであれば、次の機会は12月下旬の全日本選手権。全日本選手権の優勝者は北京五輪の代表に選ばれることが決まっていますから、そこが初戦というのはプレッシャーも大きいでしょうが……」(前出・スポーツ紙記者)

 

来年2月に開催される北京五輪。日本の代表枠は3枠だ。GPファイナルにも出場できず活躍を見せる機会が少なくなる今季。さらに全日本選手権で優勝できなかったら、もしかして羽生が北京五輪代表に選ばれない可能性も……?

 

だが、フィギュアスケート評論家の佐野稔さんは、現状でも羽生の五輪出場は堅い、と見る。

 

「五輪代表の選考基準には“総合的に判断”という余地が残されているんです。基本的には、全日本選手権に出場するべきだとは思いますが、羽生選手の場合は五輪2連覇というこれまでの実績がありますから、仮に全日本を欠場したとしても代表に選ばれる可能性は高いです。彼を代表から外すとなれば、国内外から批判されるのは目に見えていますしね。実際に平昌五輪のときも、今と同じようにケガをし、全日本選手権に出場しませんでしたが、それでも五輪に出場できています」

 

佐野さんの言う“平昌五輪のとき”が、北京五輪までの道程の参考になりそうだ。当時といまの状況があまりに酷似している。

 

「’17年のNHK杯の公式練習中に転倒し、右足関節外側靱帯を損傷しました。NHK杯は欠場しています。今と同じく五輪の3カ月前でした」(スポーツライター)

 

その後、平昌五輪まで一度も試合に出られず、“ぶっつけ本番”で挑んで五輪2連覇という奇跡を成し遂げたのだった。

 

「あのときは、ケガの回復が順調ではなく、氷上の練習に戻ることがなかなかできなかったそうです。陸上トレーニングをひたすらに行い、やっと氷上で本格的に練習を再開できたのが五輪の1カ月ほど前、4回転ジャンプの練習を再開できたのは2週間前だといいます。本当にギリギリの調整でした。

 

五輪本番も完治していたわけではなく、痛み止めを飲みながら出場。最後のフリーの演技が終わったとき、羽生選手が氷上でかがんで、激闘を労るように右足首をさすっていた光景が忘れられません」(前出・スポーツライター)

 

今回のケガに際して発表した羽生のコメントに次の一文があるが、当時のリハビリの苦労を念頭に置いているようにも見えてくる。

 

《今は少しでも早く、氷上に立つことを目指し、痛みをコントロールしながら氷上でのリハビリをし、競技レベルに戻るまでの期間をなるべく短くできるように、努力していきます》

 

「氷上リハビリは氷に慣れるのが目的。簡単に滑る程度から始めるはず。それでも痛いでしょうし、焦りと闘うつらい時期にもなるでしょう」(前出・フィギュア関係者)

 

佐野さんは語る。

 

「羽生選手はこれまでケガや震災など、数々の困難を乗り越えてきました。逆境が彼を育ててきたとも言えます。不利になればなるほど『絶対に負けない』と立ち向かい、結果を残してきた事実があります。今回もケガをしたとはいえ、いままでのことを考えれば彼はきっとやり切ってくれるでしょう」

 

羽生は過去に逆境や試練を乗り越えてきたことについて次のように話していたことがある。

 

「たくさん乗り越える壁を作っていただいて、こんなに楽しいことはない。壁を乗り越えた先にある景色はいいものだと思っています」

 

再びケガを乗り越えての奇跡を、私たちにも見せてほしい――。

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