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最近急増しているといわれる寄生虫アニサキスによる食中毒。一般家庭でできる防衛術を専門家に聞くと、意外な答えが――。医師・医療ジャーナリストでもある森田豊氏は、3年前に身を以てアニサキスの痛みを経験したという。

 

「寿司店で旬のイワシを刺し身で食べたんです。そうしたら深夜3時ごろ胃が痛くなってきて、背中にも関連痛が。最初はギックリ腰かと思って、翌朝のラジオ番組の収録にも無理やり行ったんです。でも痛みが普通じゃないので『あっ、昨日、光り物を食べた。あれだ!』って。クリニックに行って内視鏡を入れたら、3匹もいました」

 

今回、森田氏と国立科学博物館の倉持利明博士に“自己防衛術”9カ条を聞いた。

 

1. よく噛んで食べるのが大事

 

「幼虫がいても噛み殺せば大丈夫。気持ち悪いですけど(苦笑)。アジのたたきなどの伝統的食べ方は理にかなってるということ」と森田氏。倉持氏も「よく噛むこと」を対策の1つに勧める。ネットでは「噛んでも死なない」との声もあるが、森田氏は「厚労省の対策には記載されていませんが、噛むことによる予防には理論的根拠もあります」と語った。

 

2. 遠洋マグロは安全度高し

 

「いちばん大事なのは“生で食べない”ことですが、さすがに無理ですよね。次善の策は魚を冷凍すること。ですから遠洋で獲ったマグロは安全。マイナス50度で冷凍して持ち帰るため、アニキサスは一発で死にます。サンマも生のままは危ないですが、冷凍サンマは大丈夫です」(倉持氏)

 

3. 一般家庭では、マイナス20度で24時間冷凍を!

 

最近の家庭用冷蔵庫はマイナス18度以下で冷凍できるものが多いが、「マイナス20度で24時間冷凍すれば、アニサキスは死にます」(森田氏)

 

4. サバ、ヒラメは要注意!

 

「発症例が多いのがサバ。サバは身が柔らかいので、冷凍のサバが少ないのが原因だと考えられます。お酢でしめてもアニサキスは死なないので、シメサバでも発症します。シメサバを安心して食べたければ、やはり冷凍してください」と倉持氏。ヒラメは高級魚ということもあって冷凍されずに生で出されることが多く、意外と発症数が多いのだという。

 

5. 厚さ1センチまで薄く切る

 

「アニキサスは体長2~3センチ。刺し身を切るときは、1センチ以下の薄さにしましょう。厚さ2センチ以上のときは、刺し身に切れ目を入れて幼虫がいないか目視を」(森田氏)

 

6. 最大の予防策は“目視”

 

アニキサスを魚の中から見つけることが大切。「細く切るイカソーメンは“庶民の知恵”。アニサキスがいても取り除けば食べても安全。どうぞ召し上がってください」と倉持氏。

 

7. 痛みが出るのは「数時間後」で「下痢はしない」

 

アニサキスにやられたとしても、痛みが出るまで半日かかることはないそう。森田氏は「おへその上あたり、上腹部が痛みます。それより上の胸骨が痛いなら心筋梗塞。右下腹部痛なら盲腸炎。上腹部に痛みが出たら生ものを食べたか思い出して、心当たりがあれば病院へ」と語る。アニサキスは主に胃で発症するため下痢の症状は出ない。ちなみに森田先生の場合はアニサキスを取り除くとすぐ痛みもおさまり、1時間後には仕事に戻れたそう。放置すると1~2週間の痛みが続き、アニサキスが腸に達して穴を空けると命を落とすことも。

 

8. 高級店に“リスク”あり?

 

産地直送の“生”にこだわるのが高級寿司店。そのため、リスクは高くなる。「低価格な回転寿司店などでは魚も冷凍ものが多いので、魚のよしあしとは関係なくアニサキスにやられるリスクは低くなるでしょうね」と森田氏。

 

9. 無駄にこわがらない

 

最近患者数が急増しているといわれるアニサキスだが、倉持氏は「12年に患者発生を保健所に報告することが義務化されたことで、急に患者が増えたように見えるのではないかと考えています。私の考えでは、実際の患者数はあまり変わっていません」と語っていた。

 

大切なのは、危ない食べ方をきちんと知ること。美味しい魚を安全に楽しんで――。

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