昨年発表された厚生労働省の調査結果によると、日本人の平均寿命は女性が約87.14歳、男性が約80.98歳で過去最高を更新した。
だが、一方で、健康な日常生活を送れる期間を示す平均健康寿命は、女性が約75歳、男性が約72歳と、平均寿命より10年前後も短い。つまり、多くの高齢者が約10年もの間、医療や介護を必要としながら暮らしているのだ。
そういった背景もあり、近年では病気を未然に防ぐ予防医学が重要視されてきているが、なかでも「環境要素」という視点が注目を集めているという。これは簡単に言えば、温度や湿度、光、空気といった環境を構成するさまざまな要素のこと。これまで健康に影響を与えると考えられていた運動、食事、メンタルの3つの要素に付加された新しい要素で、「住環境」と密接に関係している。
実際、温度や空気といった住環境を適正に保つことにより健康寿命が延びることは、多くの研究や調査からも明らかになっているという。つまり、毎日多くの時間を過ごす住まいを安全・快適なものにすることが、結果的に健康長寿にもつながるというのだ。
家族や友人とコミュニケーションを交わしながらの食卓は、なぜか食が進むもの。食事の場面を単なる栄養補給ではなく、日常的な楽しみにすることが、心身ともに健康な毎日への第一歩となるはずだ。そこで、楽しい“食の場”を演出するためのポイントを紹介。
■ダイニングにオーディオを導入して食事をおいしく
平成20年度の日本調理科学会大会の研究発表では「好きな音楽を聴きながら食事をすると食欲が増す」という結果が報告されている。食欲と楽しさには相関関係があるため、ダイニングにオーディオを置いて好みの曲を流すのもおすすめ。逆に、嫌いな音楽を聴きながら食事をすると食欲が低下するという結果もあるので要注意。
■食卓の照明を落とせば消化・吸収力がUP
照明によって料理がおいしそうに見える、という経験をしたことがある人は多いだろうが、じつは照明が味覚に影響を与えることは科学的に実証されている。甘味と苦味がより敏感になる明るい昼光色の照明は、味見をするキッチンに、また、唾液の分泌量が増える少し暗い電球色の照明をダイニングにと使い分けよう。
■緑が見える環境での食事は健康的&ぜいたくな印象に
景観と味覚に関する実験によると、緑を見ながら食事をするとおいしく健康的な印象を持ち、屋内より屋外のほうがよりぜいたくな印象を持つことがわかった。屋外でも、周辺全体を緑に囲まれた場所より、一方向が建物に隣接しているテラスなどのほうが、リラックスできておいしく感じるという報告もある。
■食卓の鏡で孤食もおいしく感じられる!?
近年1人で食事をする「孤食」が増えているが、「鏡に映った自分の姿を見ながら食事をすると、鏡なしの場合に比べ食べ物をおいしく感じる」という結果が名古屋大学大学院情報学研究科の研究で判明。残り物ですませがちな1人の昼食にもってこい!?
住まいのちょっとした工夫でリラックス効果の高い食卓を演出しよう。