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「全国の特別養老老人ホームなどを対象に、あるNPOが’15年に調べた結果、’12年以降の3年間で虐待と思える行為が『あった』『あったと思う』と答えたところが1,510カ所、全体の16.8%もあることが、明らかになりました」

 

こう語るのは、『介護ビジネスの罠』などの著書がある、介護・医療ジャーナリストの長岡美代さん。

 

「たとえば’15年2月、東京都北区の医療法人が運営するシニアマンションで、一部の高齢者への虐待事件が発生しました。マンション内で入居者がベッドに縛りつけられていた、などの事実が公表され、全国に知れ渡りました。こうしたことが後を絶ちません」

 

ほかにも同年には、神奈川県川崎市の老人ホームで虐待や窃盗が発覚。不審な転落死も相次ぎ、老人ホームを運営する事業所は行政処分を受けた。’10年には、群馬県内の無届けの高齢者施設で火災が発生。10人のお年寄りがなくなった。入居者の徘徊防止のため、出入口を南京錠などで施錠し、避難できない状態になっていたという。

 

長岡さんは、こうしてたびたび起こる介護現場の「質の低下」の原因を、次のようにみている。

 

「大きな要因のひとつは『サービス付き高齢者向け住宅』、いわゆる『サ高住』の乱立です。『サ高住』とは、安否確認と生活相談サービスが付いた、バリアフリー対応の集合住宅のことで、デイサービスなどの介護事業所を併設しているところも多いです。そういう『外見』は、いい条件に思えるんですが……」

 

施設選びを間違えて、最悪の老後は迎えたくないもの。そこで、長岡さんが「後悔しない老後」を送るために高齢者施設の探し方七カ条を教えてくれた。

 

【1】介護施設・老人ホームサービスが、本当に必要なものなのか確認し、不必要なら「要りません」という。

 

【2】介護付き有料老人ホームなどの見学の際は、要介護レベルが重度の方の様子も見せてもらう。

 

【3】入居してみて、当初と話があまりにも違う場合は、転居も考えるべき。

 

【4】老人ホーム側の「早めに契約したほうがいいですよ」「ほかよりも安く入所できます」という言葉には飛びつかない。

 

【5】ホーム側の口頭での説明はアテにせず、重要事項説明書は契約前にもらう。

 

【6】「契約しないと重要事項説明書は渡せない」というホームとは契約しない。

 

【7】「一時金なし」などの誘い文句には、ほかに過剰に発生するおカネがないか疑ってかかる。

 

特別養老老人ホームや介護老人保健施設などの介護施設、民間企業がおもに運営している介護付き有料老人ホームは「職員常駐型」。だが、サ高住は法律で規定された介護・看護職員の配置がなく、必要なサービスを組み合わせて利用する「別途契約型」となる。サ高住は国から1戸あたり最大100万円の建設費補助があり、’11年10月の制度化以来、およそ19万戸が整備された。さらに安倍政権は「介護離職ゼロ」政策で、2万戸を上乗せ・前倒し整備することを決めたばかりだ。

 

「この国からの補助金が『なんとなくもうかりそうだ』と新規業者を安易に参入させることとなり、結果、高齢者を“金もうけの道具”としか考えないような、不届きな事業者が跋扈しているんです」(長岡さん)

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