「ちまたでよく『自立した子を育てよう』なんていわれていますが、私は『自立』という言葉は、曖昧で意味がよくわからない言葉だと思います。『自立』よりも『自活』。つまり、“社会に出て、仕事を楽しみ、自分で稼いで食べていける子”に育てることを目標にしたんです」
こう語るのは、子どもたち4人を、日本の最難関といわれる東京大学理科III類に全員合格させた“佐藤ママ”こと、佐藤亮子さん。2月に出版した著書『志望校は絶対に下げない! 受験で合格する方法100』(ポプラ社)では、佐藤家独自の勉強法が紹介されている。
佐藤ママは、「子どもたちの東大理科III類合格が将来の目標だったわけじゃありません」と話す。“佐藤家流”勉強法を編み出したのは、すべては「自活できる子」に育てるため。
「『自活』するには、仕事が必要です。それも楽しいと思える仕事につけたら、幸せでしょう。仕事の選択肢を広げるのに必要なのが、『読み書き』『計算』、そして『読解力』なんです。子どもたちには、この3つを徹底させました」(佐藤ママ・以下同)
現在は、4きょうだいが通った進学塾「浜学園」のアドバイザーとしても、全国で講演を行っている。そんな佐藤ママが、子育てのうえでやってしまいがちな“ダメ親”の特徴をあげてくれた。
【ダメ親1】「努力しなさい」と根性論を振りかざす
全国で行う講演でよく聞かれるのが、「やる気スイッチはどこですか?」「集中力はどうしたらつきますか?」という質問だそう。
「そんなものがあったら、私も知りたいくらい(笑)。子どもは集中していないから問題を解けないのではなく、解けないから集中できない。だったら、二学年ほどさかのぼって、わかる問題を解かせてあげることが大事。正解を出せれば、おのずとモチベーションが上がって集中するようになるんです」
「努力すればいい」と、根性論では何も解決しないのだ。
【ダメ親2】勉強部屋として個室を与えている
「子どもにとって勉強は、知らないことを知ろうとする作業。ノートと自分だけ、という空間は、ものすごく孤独なんです。ですからノートから離れ、目を上げたときには、子どもを孤独にしないことが大切です」
佐藤家ではきょうだい4人がリビングで勉強していたため、子どもたちが1人になることはなかった。
「学校帰りに塾に行き、帰宅しても自室で1人……。それでは孤食にもつながります。そのうち子どもも家を出て自分で生活するようになるんですから、それまでの限られた時間、ノートに向かう以外は、楽しく一緒に過ごし勉強する、それが佐藤流です」
【ダメ親3】安易な海外留学をさせようとする
「大学生は、“半分大人で半分子ども”。アルバイトで、失敗しながらマナーを身につけ成長できる貴重な時間です。海外で働くなら別ですが、日本人として日本の社会に出るなら、その準備期間に海外の社会で学んでも通用することはほとんどない。留学は卒業後でも遅くありません」
“縁の下の力持ち”として、4人を育てあげた佐藤ママ。
「この縁の下がいなければ、人は成功できません。表に出なくても、子どもをきちんと育てれば、世の中に貢献したことになります。母親は、子育てという一大プロジェクトのリーダーなんですから! でも最近は子どもたちに、『いまではお母さんがいちばん表に出てるじゃん!』なんて言われちゃってますけど(笑)」
子育てで培った経験は、佐藤ママのその後の人生にしっかりと生きているようだ。