“空前のねこ人気”といわれる今、秋田県とロシアの友好関係をぐぐっと深めた親善大使として大いに注目を集めているねこがいる。それがミールくんだ
そこで先日、発売になったばかりの特別ムック『ねこ自身グルーミング』(光文社・694円+税)取材班が、“世界平和の使者“ともいうべきねこ、ミールくんの素顔に迫った。
ミールくんが、秋田県の佐竹敬久知事のもとに贈られてきたのは’13年2月。その前年、秋田県庁が「東日本大震災の際、ロシアに多大な支援をしていただいた」と感謝を込めて、大の犬好きとして知られるロシアのプーチン大統領に秋田犬の“ゆめ”を寄贈。その返礼として、“ロシアの国宝”とも呼ばれるサイベリアンのオスねこを贈りたいと、大統領から告げられたのだ。
「最初に打診があったとき、“驚き”と“うれしさ”で胸がいっぱいになりました。私がねこ好きだと知っていてくださるなんて。そんなありがたい思いが込められたねこを、正直な話、要らないわけがない! ロシア語でミール(平和)という名前をつけて、私の自宅で飼うことにしたんです(佐竹知事・以下同)
県議会からは「秋田県に贈られたのだから一般公開しては?」という意見もあったそうだが、ねこの性格を熟知している知事はこれを却下。
「ねこは静かな環境を好む動物なので、常に人の視線にさらされる生活は好ましくない」
と、自宅も兼ねた知事公舎にミールくんを迎え、これまで約5年間、飼育にかかる費用はすべて知事の自腹で!
「ミールを迎えるにあたり、当初は、人間が入れるほど大きな専用のケージと、その中に高級なトイレを用意していたんです。ですが、ケージに入るのは嫌がったので、最初から自由に家じゅうを歩かせています。エサも、長毛種用の高級なキャットフードを東京から取り寄せているんですが、ほかのねこたちと一緒に、時折、庶民ねこ用のフードも満足そうに食べていますね」
そもそも佐竹知事は、県知事になる前に秋田市長を務めていたころから、公舎に住み着いた野良ねこたちの世話を始めたというねこ好き。現在、ミールくんと一緒に飼っているねこたちは、キイロくん(オス)、フツコ(メス)、クマコ(メス)、1本ピンコ(メス)、ボンタ(オス)、カラアゲコ(メス)の6匹。ミールくんは日本生まれの先輩ねこたちとも穏やかな友好関係を結んでいる。
「ミールは長毛種で、体重も8キロ近く。一般的な和猫とはかなり風貌が違うので、もしかするとほかのねこたちはミールのことをねこだとは思っていないのかもしれません。でも、特にケンカもせずに、ミールはカラアゲコとじゃれ合ったり、追いかけっこをするのが大好きなんですよ」
人間の家族の中で、ミールくんがいちばん懐いているのは佐竹知事のお嬢さん。
「長毛種なので、朝、ウンチをすると、どうしてもお尻の毛に少しウンチがついてしまう。そうすると、バスルームに入る娘にくっついて、“洗ってくれ”と言わんばかりにお尻を突き出して、毎朝、きれいにしてもらっています」
そんな愛らしいミールくんを見ていると、日ごろの疲れも癒されるそう。
「このところ、土日、祝日返上で公務をこなす日々が続いていますが、帰宅してミールの顔を見ると疲れが吹っ飛びます。エサを与えるときに『おちょちょ、おちょちょ(おー、よしよし)』と言いながらおなかをなでてやると、あおむけになって足を思いきり広げ、気持ちよさそうに鳴くんです。その姿がかわいくてね」
もちろん、ロシアとの友好関係も、ミールくんのおかげで大いにプラスになっている。
「秋田県とロシアは古くから交易がある縁の深い関係。私も毎年、貿易促進業務でロシアに出かけています。現場でのさまざまな交渉の場でミールの話をすると、それまで政治的な緊張で張りつめていた空気が、たちまち和んでいくんです。ミール(平和)という名のとおり、これからも秋田県とロシアをつなぐ平和の使者として、ひと役買ってくれたらと願っています」