「私がお伝えしている『指にぎり』は、もっとも簡単にできる『仁神術』です。すでに、世界中で1万人以上が実践していますよ」
そう穏やかに話すのは、日本で唯一仁神術の継承者である加藤貞樹さん(47)。仁神術は、東洋医学でいうところの「気」の流れを整える治療法。創始者の村井次郎氏が100年ほど前に日本で開発した。2年前に他界した村井氏の最後の弟子・加藤春樹氏の息子が、この貞樹さんだ。父親から手ほどきを受け、現在は自らの鍼灸治療に取り入れているほか、アメリカ、ドイツ、ブラジルなどでも仁神術を教えているという。
「人間の体にはエネルギーが流れていて、東洋医学ではこれを気と呼びます。そして、体の不調は、気が乱れたり滞ったりすることで起こると考えています。ですから、全身の気の流れを整えれば、心身のつらい症状、ネガティブな気分、病気による痛みなどを改善できるのです」
冒頭でふれた“手技”は、この仁神術の入門編だという。そっと指をにぎる「指にぎり」で乱れた気を整え、感情をコントロールできるのだ。
「とても簡単です。自分が抱えているトラブルに対応する指を、反対の手の指でそっとにぎるだけですから」
そこで、加藤さんがにぎり方のポイント、それぞれの指に対応する感情と効果について教えてくれた。
【にぎり方のポイント】
どちらの手でもOK。にぎる指の手のひら側に、反対の手の親指以外4本の指の腹をしっかり当てたら、軽く包むようににぎる。脈を感じ始めたら、深呼吸しながらリラックスし、5~10分キープ。
【親指】心配
「親指は『心配事』や『肉体疲労』などとリンクしています。心配ばかりしていると、つながっている臓器である胃やひ臓にも不調が表れ、胃の不快感や頭痛などを引き起こすのです」(加藤さん・以下同)
【人さし指】恐れ
「人さし指は対人への『恐れ』とリンクしています。恐怖を感じることで、歯痛や背中の痛みが出てきたり、膀胱や腎臓などに不調が表れたりしてきます」
【中指】怒り
「中指はイライラしやすい性格とリンクしています。イライラしやすい人は、肝臓や肺が弱く、疲れやすい傾向があります。イライラを感じたときは、中指をそっとにぎってみてください。気持ちが静まり、疲れが癒されていくのを感じるでしょう。目にトラブルが出たときも、中指をにぎると効果があります」
【薬指】悲しみ
「ちょっとしたことでも悲しくなったり、落ち込んだりする人は、薬指をケアしましょう。そのような性格の人は、肺や大腸に不調が出やすい。耳鳴りや、呼吸が浅くなるという症状で体に表れます」
【小指】がんばりすぎ
「神経質で真面目な人は、がんばりすぎてしまう傾向がありますね。腹部の膨満感や吐き気、喉の痛み、心臓の不調といった症状が体に出ます」
自分の脈を聞きながら深くリラックスすることで、体全体の気が整う。また、複数の負の感情や症状があるときは、“2段階にぎり”が効果的だ。たとえば、悲しみと怒りを同時に感じているなら、まず2~3分、中指をにぎって気持ちを落ち着け、さらに薬指を2~3分にぎって前向きな気持ちを取り戻そう。