「親知らずを除くと人の歯の数は全部で28本。20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができるといわれています。最新の報告では、80歳になって自分の歯を20本以上持っている日本人が5割を超えたというデータがあります。しっかりケアすれば、80歳で20本以上の歯を残すことは夢ではない時代なのです」
こう話すのは、歯科医院経営誌『月刊アポロニア21』編集長の水谷惟紗久さん。大人になって歯を失う原因の多くが歯周病。また歯周病は認知症を悪化させることもわかっている。
「歯周病の病原菌が出す毒素などが、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβという物質を増やすとされています」(以下、コメントはすべて水谷さん)
では、死ぬまで自分の歯を残したいと思ったら、どんなクリニックを探せばよいのだろう。歯科医療の最前線に詳しい水谷さんに、チェックすべきポイントを教えてもらった。
【1】定期的メンテナンスは必須。歯周病の重症化を防ぐ!
最近は予防歯科といって、3カ月〜半年間隔で、歯のクリーニングを勧める歯科医師が増えている。歯周病菌の温床と考えられている歯石や、細菌の塊であるプラークを取り除くのだ。
「歯石取りそのものが歯周病を防ぐというよりも、半年に1度くらい、口腔内をチェックしてもらうことで歯周病の進行を早く発見し、手当てできるという利点のほうが大きいのではないでしょうか」
「痛い」「高い」というイメージは歯科医院の問題だけでなく、歯周病や虫歯が進行して歯を抜く必要が出てくるから。定期的な口腔メンテナンスで必要最小限の治療を受けたい。歯がぐらついてから受診するより、全体的な治療費も安くなることが多いはず。
【2】複数の歯科衛生士がいる、大型クリニックを選ぶ!
半年に1回通う歯科医院はどんな基準で選ぶべきか?
「これだけ歯科医院が多い今、非常に悩ましい問題です。正直、治療の腕は、院長一人で診療していて、患者数の多いようなところが信頼できることが多いと感じます。ただクリーニングの技術は歯科医師より歯科衛生士のほうがたけていることが多い。また、歯科衛生士が複数いる医院のほうが技術が安定しているという傾向があります」
歯周病予防を第一の目的とするなら、歯科衛生士の数が多いクリニックに行くことを本誌はお勧めしたい。
【3】歯周病予防タブレットなど、常に最新情報を提供!
広島大学歯学部の二川浩樹教授が、歯磨きや歯石取りをまったくしないのに、虫歯にも歯周病にもならない人を発見。そうした人の口腔内の細菌を調べたところ、共通の乳酸菌がいることがわかってきた。これをタブレットなどにして商品化。最も歯周病菌が増殖する就寝前に服用することで、歯周病などを防ぐことが期待されている。
「現在、数社から発売され、歯科医院で入手可能。試してみるのもいいでしょう」
優れた歯科医院であれば、こういった“患者重視”の最新情報も紹介してくれる。
【4】かぶせ素材は保険適用の有無も含めて慎重に検討を
メンテナンスをしていても虫歯にはなる。そのときは患部を削って詰め物やかぶせ物をするのだが、充填にどんな素材を使うかが分かれ道に。
歯科医師の多くが「本当は自由診療のほうが満足な治療ができる」と口をそろえる。ただ自由診療を選択した場合でも、セラミックが最良なのか、昔ながらの金や白金が最良なのかは、歯科医師によっても意見はまちまちだ。
「最近はセラミック製などの硬い素材が顎関節や反対側の歯に与える影響が考慮され、奥歯への使用を避ける歯科医師が増えています。一方、金や白金は軟らかいのですが、見栄えや硬度に難があるとされています」
水谷さん自身は「アレルギーチェックを含めた診療の結果、自由診療で白金を使っている」とのこと。
保険治療では、奥歯は金銀パラジウム合金が主要な選択肢だったが、見栄えに難があるうえ、金属アレルギーとの関連も指摘されていた。そこで将来、主流となるかもしれない素材がプラスチックだ。
「今年4月の保険改定で、いままで奥歯に使用するには強度不足として認められていなかったプラスチック製のブロックがOKになりました。CAD/CAMというロボットが作製するかぶせ物です」
保険診療の範囲内で定期的に通える歯科医院を見つけるのが、いちばん賢い方法と言える。